当時タイを一人で旅していた僕は、バンコクで知り合ったティップという名の若者と一緒にアユタヤに一泊二日の小旅行に出掛けました。 ティップはタイ人でありながらアユタヤを訪れるのは僕と同じく初めてでした。 その感覚は日本人が初めて京都を訪ねたようなものに近かったのではないかと思います。
アユタヤはタイの古都であり、街のあちらこちらに遺跡が点在しています。 僕はなぜだか昔から遺跡とか廃墟のような場所に行くと心が落ち着きます。 そんな場所に実際に立って、かつてここにいた人たちの事や栄えていた王朝に想いをはせるのはなかなかいいものです。
写真はワット・プラ・ラムという寺で、15世紀と18世紀に改修されたものの、度重なるビルマ軍の侵攻によって破壊されてしまいました。 廊下の両側にはもともと仏像が置かれていたのですが、これもビルマ軍によって破壊、略奪されたのです。 タイの典型的なパゴダ(仏塔)は先端が細く尖っていますが、アユタヤにはこうしたアンコール・ワットのような土筆型の先端部をもつパゴダがいくつか存在します。
「何かポーズをとってくれないか。」と頼んだ僕に、ティップは蝶のポーズで応えてくれました。 この寺に来る直前に一羽の美しい蝶を見たからです。