中村への道が長く険しいものになるであろうことは容易に想像できた。 そもそも中村は単なる製麺所に過ぎず、ゆえに幹線通りに面しているわけでもなく、うどん屋の看板を掲げているわけでもないので発見は非常に困難である。 我々は前夜ネット上を入念に検索し、いくつかのサイトから不確定極まりない中村へのアクセス情報を入手、これらを複層的に組み合わせることでどうにか中村への道順をおぼろげながら掴んでいたのだった。 しかし残念ながら地図情報は結局入手できす、持参できたのはプリントアウトしてきた言葉による道案内のみである。 不安がないと言えば嘘になる。 我々は遅くとも同日深夜には東京に戻らなければならない。 時間は限られている。
瀬戸大橋は偉大だ 他に言うことがない 関門橋を渡り中国自動車道へ、山口ジャンクションを経て山陽自動車道へ入る頃にはそうした不安よりもむしろ期待のほうが我々の心を支配した。 午前11時半、倉敷ジャンクションから瀬戸大橋へと向かう。 初めて通る瀬戸大橋は実に巨大だった。 これはもはや橋というスケールを超えている。 何せ途中にパーキングエリアまであるのだ。 我々は四国上陸前にこの与島PAに立ち寄り、その後の道順の最終確認を行った。 この先は願わくば中村までノンストップで行きたいものだ。 ルイジはサーフィンで、クニーニョは出張でそれぞれ四国上陸経験があったが、僕にとって四国は未到の地、まだ見ぬ日本なのである。 期待感は否応なく高まってきた。 与島PAで瀬戸大橋をバックに写真に収まるルイジとクニーニョ 四国上陸をもくろむ某宗教団体の構成員では決してない クルマに乗り込みいざ四国へ出発。 左側には大小さまざまな瀬戸内海の島が浮かんでいる光景が見える。 目的地である讃岐地方は香川県の北部一帯を指す。 坂出北ICを通り過ぎ、次の坂出ICで高速を出る。 料金所を過ぎるとすぐに国道11号線がある。 それを右折して西に向かう。 そのままひたすら直進していると5分ぐらいで土手の部分が盛り上がった大きな川に懸かる橋に到達した。 これが土器川だ。 この橋の手前で左折して川べりの道を延々進む。 ネットで仕入れた情報通りの展開に我々は安堵した。 あとはこの道を突き当たるまで行く。 なかなか突き当たらないのでやがて不安になってしまいそうなほど進むが決して戻ってはならない。 戻ったが最後中村のうどんには永遠にありつけないのだ。 それでも予定通り道が突き当たった時の喜びといったらなかった。 突き当たりのT字路の左側には目印のガソリンスタンドも見える。 ここまで来れば中村は目前だ。 このT字路を左折、ハンドルを切る手にも力が入る。 すると前方に黄色の点滅灯のある交差点が見える。 またも予定通りだ。 あまりの順調さに一同拍子抜けしながらもこの交差点を右折、中村はまさに目と鼻の先である。 坂出ICで出るべし! 一部のネット情報には「坂出南IC」とあるが、これは間違いである T字路に突き当たった時に左手に見える出光のGS この時右手には土器川に懸かる橋とその先のローソンが見えるはずだ 黄色の点滅信号の交差点 「恐るべきさぬきうどん」には「岩崎タクシーのとこの信号」とある ここを右折すべし! 道が次第に細くなってきた。 あたりにはのどかな田園風景が広がる。 しかし本当にこんなところに中村はあるのであろうか? やがて飯山町(はんざんちょう)の標識が見えてきた。 間違いない。 我々は中村への道を着実に進んでいることをその標識によって確信した。 道がゆるやかなS字を描いたかと思うと両側に民家が現れた。 ここから最後の難関が待っている。 中村は一見ただの民家風の建物であるうえに何の看板も出していないので訪れた人のうち10人中8人は素通りしてしまうというのである。 我々はクルマの速度をできるだけ落とし、細心の注意を道の右側に向けた。 ネットから入手した情報によれば煙突が目印とある。 しかしそんなものはどこにも見当たらない。 我々が途方に暮れようかとしたその瞬間、建物と建物のわずかの隙間に、うどんを食べている人の姿が通り過ぎざまに一瞬見えた。 道から見た中村の外観 特徴的なものはまったくと言っていいほど何もない よく見ると左側の建物の屋根の上にかすかに煙突が出ている しかしこれを目印にして行くと発見することは極めて困難だ 「ここだ!」 我々はついに中村に辿り着いたのである。 結果から見ればその道のりは順調そのものであった。 しかし中村はようやく辿り着いた我々に最後の難関を用意していた。 それはこの旅の行程のなかで最も険しいものであった。(2000/10/29出稿を再録) 邂逅編につづく Vote for Design+Art Blog Ranking
by theshophouse
| 2004-10-17 16:29
| Odyssey
|
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