恥ずかしながら僕はテレビがないと生きていけない類いの人間です。 家にいる時はだいたいテレビをつけていないと落ち着きませんし、見ていない時でもテレビの音が生活騒音として流れていないと何だか不安なのです。 まあこれはほとんどビョーキです。
毎日テレビを見ていると実に様々な映像や音声を見聞きすることになります。 それらのなかには美しいものや醜いもの、面白いものや退屈なもの、強いものや弱いもの、つまりは世の中のほとんど全てのものがあります。 特に最近のテレビ放送は、万人に見せるものであるにも関わらず「きちんと選ばれていない」素材や題材が多すぎて、まさに情報のタレ流しといった感さえします。 そんな僕のストレス解消のひとつが「テレビに向かって悪態をつく」ことです。 最近僕が毎週悪態をつきながら見ているのが、TBS系の「世界遺産」という番組です。 最初に断っておきますが、この番組はとてもいい番組です。 世界遺産である素材の選定はもちろんのこと、その魅力を余すところなく伝えるハイビジョン撮影による質の高い映像など、番組としてかなりのレベルに達していると言っていいでしょう。 ただひとつ緒方直人のナレーションを除いては。 先日はマダガスカル島の特集で、世にも不思議なバオバブの木や例の横っ跳びで有名なキツネザルの映像など楽しく見ていたのですが、全編にお経のように流れる緒方直人のナレーションが気になってしょうがない。 というか不快である。 なぜ彼はあのように平板な喋り方をするのだろうか。 あまりにイントネーションがなさ過ぎて、ときおり言葉の語意さえも把握しかねる状態に陥ってしまう。 たぶん彼は、森本レオや江守徹がナレーションという分野で独自の世界を築き上げたようなことを自分も成し遂げたいと思ってやっているのであろうが、現状を見る限り勘違いと言わざるをえない。 この場合、彼にとって語りの対象である世界遺産は、自然物の場合は人跡未踏の秘境であったり、また人工物であっても歴史的建造物などが主なので、ナレーションに求められるのは過度の感情移入でないことは確かである。 だからといって全編を般若心経のように喋るべきでは断じてない。 よいナレーションとは、映像と一体化して自然に受け手の体の中に入ってくるようなものであると僕は思う。 もっとも、僕に言われる前に彼の父親が一言「おまえ、あの喋りはマズいよ。」と諭すべきである。 プロ野球もよく見る。 解説者を名乗るプロ野球OBたちの間抜けな喋りに悪態をつくためだ。 彼らの仕事ぶりを見ていると「野球解説者ほど誰にでもできる仕事はない」ことを痛感させられる。 やれ次はカーブだフォークだ、結果論ですが云々、ここまできたら技術じゃないですね気持ちの勝負ですね等々。 彼らの常套句には枚挙にいとまがない。 ピッチャーが次に投げる球種を予想することにどれだけの意味があるのか。 しかもよく外す。 スポーツは何でもダイナミックなもので、今そこで起こっていることである。 予想は無意味だ。 起こった結果に対して、その結果に至った原因を技術面と精神面から解説すべきなのである。 結果論は聞き飽きたし、テレビを見てる誰もがわかっていることをあえて言う必要はまったくない。 気持ちだけでヒットが打てるわけがない。 そんな解説は川藤ひとりで十分だ。 最後は技術なのである。 プロ野球のOBとして、あらゆる局面での選手のリアルな心理状態の推測と、なにより技術解説こそ不可欠ではないか。 僕はイチローがなぜあんなにヒットを打てるのか知りたいが、そのことを明確に説明した解説者を知らない。 ヒーロー・インタビューで完投した投手に「今日のピッチングは100点満点で何点でしたか?」と聞くオバカなアナウンサーも後をたたない。 プロのインタビューアーであるならば、その日の彼のピッチングを自分なりに分析し、彼に「よくぞ聞いてくれました」と思わせるような質問をしてナンボではないのか。 そもそもピッチングなどというものは100点満点で採点できるような性質のものではないし、仮にマヌケなピッチャーが「80点ぐらいですかね。」などと答えても、視聴者としては「ふうん」と思うだけである。 僕がそのピッチャーだったら、そのての質問はシカトしてそいつに恥をかかせてやるのに、と思う。 とまあ僕はこのように少々ひねくれた態度でテレビを見ているわけですが、人様に見せるにも聞かせるにもお粗末なものがテレビの世界には横溢しているわけで、そうしたものに悪態をつきながらテレビを見るというのはなかなか高尚な趣味であると思っています。 抗議電話をかけるようなみっともない真似だけはしない、というのがこの趣味における唯一のルールです。(1999/8/21出稿を再録)
by theshophouse
| 2004-10-17 14:39
| Critique
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