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茶番の先にあるもの
 ワールド・ベースボール・クラッシック(WBC)日米決戦、日本は疑惑の判定もあり、サヨナラ負けで涙をのんだ。 だいたいこのWBCがアメリカ主導で行われると聞いた時から「ロクなもんじゃないな」という思いはあった。 日本が最後まで参加を渋ったのもうなずける。 イラク戦争を筆頭に、今世界中のありとあらゆる分野でアメリカ主導で行われている事の多くが良い結果を生んでいないからである。
 二次リーグ以降の組み分けを見ても、アメリカはドミニカ、プエルトリコ、キューバ、ベネズエラといった中南米の強豪国とは決勝まで対戦しないでいいようになっている。 仮に二次リーグでアメリカ1位、日本2位でそれぞれ通過した場合、準決勝ではまた日米決戦となる。 アメリカはワールドシリーズの権威が失墜することを恐れるあまり、自国をほぼ無風状態で決勝まで進めるように画策したのがミエミエだ。
 つまるところ、アメリカというのはいつだって自国の利益のみを最優先する国家である。 そんなアメリカが主導するこのWBCだが、対照的にサッカーのW杯はFIFAという国際的な組織が中心にある。 確かにFIFAにも欧州偏重主義的なところはあるが、それでもアメリカ一国が主導するWBCとは根本的に違う。 この試合にしてもオーストラリア人の三塁塁審を除く3人(球審、一塁塁審、二塁塁審)はすべてアメリカ人であった。 しかも球審を務めていたのは1999年にメジャーリーグを追放され、ロッテのバレンタイン監督にも「目立ちたいがためにボークを良く取る審判」と指摘されるデビッドソン氏。 そもそも対戦当事国の人間が審判を務めることなどサッカーではありえないうえに、なんとこのWBCではメジャーリーグの審判は誰一人おらず、みなマイナーリーグの審判たちだという。 これが野球世界一決定戦の実体である。 選手は一流でもそれを裁く審判は四流。 この疑惑の判定、或る意味起こるべくして起こったとも言っていい。 2002年ウリナラ杯のモレノ主審と同じ構図だ。
 今回の判定は一度セーフとジャッジされたものが、アメリカ代表監督の抗議で覆るという、あまりに理不尽なものであった。 ただ、どんなに理不尽な判定だろうが、その権利が審判という不確定要素を多分に含む存在に委ねられている以上、受け入れるしかないだろう。 そうした意味で、試合後の王監督とイチローの会見は、なかなか考えさせられるものがあった。 二人の話を聞いていて感じたのは、二人とも同様にサムライのメンタリティーを持っているということ。
 王監督は、判定について「一度出たジャッジが変わらないというものが野球だとわれわれは考えているから。 二塁塁審がランナーとボールを見て、捕るのと走るのを確認しているわけだから、その塁審がジャッジしたものが最終だと、われわれの習った野球や、やってきた野球はそういうものだと思っている。 特にアメリカだから、判定が訂正されるということは、世界中で見てるのにアメリカのためにもならなかったと思う。」と異議申し立てはしたものの、ジャッジについて提訴できないことを理由に、これ以上の言及を避けた。
 王監督同様険しい顔で会見に臨んだイチロー。 WBCに参加してからというもの、これまで多くの人が持っていた「クールで個人主義のイチロー像」をいい意味で裏切り続けてきた彼の口をついて出たのはこんな言葉だった。
 「この野球の国に来て、最高の舞台で君が代を聴いて、あらためて日の丸の重みというものをあの瞬間に感じたし、選手はみんな国歌を聴いて、強い気持ちを持ってゲームに入ることができたと思います。 こういう気持ちになったのは、僕は初めてでした。」
 やっぱり日本代表の「右翼」はこの男しかいない、と思わせるイチローの言葉である。 国と国とがぶつかるというただそれだけの事が、あのイチローですらルーティーン・ワークになりかかっていた野球に新たな地平を垣間見せたということだろうか。 それも未開の大地を。
 イチローはまた、直接問題の判定には触れず、自身が凡退した7回のチャンスを振り返り、「僕の完全なミスです。 100パーセント、僕のミス」と自分を責めた。 また王監督が抗議中に選手たちがグラウンドに出なかったことを問われると、「チーム全員が判定に納得できなかったし、監督が抗議している時に僕たちだけグラウンドへ行くことなどできない。」と語った。 むしろ会見場で質問攻めにすべきは、王監督が面と向かって抗議中なのにも関わらず、日本のダッグアウトに向かって指を振り、グラウンドに出るように指示を飛ばしていた球審。 やはりメジャーを追放されただけあって、自分の立ち位置もよく見えていないらしい。
 イチローがWBCに参加した大きな理由に「メジャーリーグにおける人種差別問題」があると言われている。 イチロー自身、いまだ白人至上主義と言われるメジャーリーグの中でマイノリティーとしての自分を感じながらも、人一倍の努力を重ねて今の地位を築いてきた。 そんなイチローにあってもいまだに多くの不可解な判定に悩まされ、そこには人種差別的な意図を感じることがあるという。
 つまりイチローは日本代表の一員としてアメリカと戦って勝つためにこのWBCに参加したのである。 勝つことによって、そんなメジャーリーグの白人至上主義を根底から揺さぶってやろうと考えたのである。 そんなイチローにとってこの試合は決してただの二次リーグの一試合などではなかった。 しかし、イチローにとっては満を持して臨んだこの試合も不可解な判定、それもとびきり不可解な判定で敗れてしまったことは何とも皮肉である。
 「消化しづらいゲーム。 後味は悪いし、明日ゲームがあったらつらい。」 イチローは整理できない胸の内を率直に言葉にした。 アメリカのアメリカによるアメリカのためのWBC。 茶番の先にあるのは、それでも栄光と呼べるものなのだろうか。
茶番の先にあるもの_b0045944_1822167.jpg

疑惑の判定【動画/WMV】
疑惑の判定【You Tube】
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World Baseball Classic
by theshophouse | 2006-03-14 18:30 | Critique
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