御多分に漏れず、僕が彼女のことを知ったのは例の
「情熱大陸」という番組でのこと。 遅ればせながら
上原ひろみの二作目である「BRAIN」を聴いてみた。 それは驚くべきアルバムであった。
1曲目の「KUNG-FU WORLD CHAMPION」。 彼女はライナーノートに「ブルース・リーとジャッキー・チェンの為に書いた曲で、彼らはいつも私に多くのインスピレーションを与えてくれる。」と記しているが、演奏そのものはチック・コリア・エレクトリック・バンドを彷彿とさせるもの。 実は彼女、17歳の時に
チック・コリアのステージに飛び入りし、インプロヴィゼーションを披露したことがあるそうだ。 2曲目の「IF...」は好きな曲だ。 「ジョー・サンプルみたいで好き。」という妻に同意。 4曲目はアルバムのタイトル・チューンである「BRAIN」。 美しい旋律が印象的な曲だ。 人間が産声をあげてから意識が覚醒し、長い人生での様々な断層を経て、最後に脳が発する電気信号が途切れ途切れになっていきやがて死に至るまでの過程を表現した、間違いなく本作中の最高傑作だと思う。
5曲目の「DESSERT ON THE MOON」はどこか
ゴンザロ・ルバルカバの匂いがするアップテンポの曲。 彼女ならゴンザロ並みの超絶タッチもさらっと弾きこなしてしまうだろう。 この他、自らの故郷である静岡をテーマにした「GREEN TEA FARM」、日本の古い民話をベースに書いたという「LEGEND OF THE PURPLE VALLEY」は
スティーブ・キューン的静謐さに彼女のリリシズムが加味された秀作である。
とにかく彼女にはジャズ・ピアノの全てがあり、そしてまたその規定された表現領域に決して拘泥することのないオリジナリティあふれる音作りは、ただただ驚嘆するのみである。 これほど人の才能を羨んでしまうのは、やっぱり彼女が同じ日本人だからだろうか。 あなたもこの「BRAIN」で個人的にBrain Stormingしてみるといい。
もうライヴに行くしかない!