懐かしのオート三輪を見た。 「懐かしの」と、必ず枕詞がつくオート三輪。 子供の頃、いきつけの駄菓子屋の店先にいつも停まっていたオート三輪。 曲がり角でよくコケて、そのたびに大人たちが数人でよっこらしょ、と起こしていたオート三輪。 そしていつの間にか忽然と消えたオート三輪。
とあるホームセンターの駐車場にそれはあった。 それはまるでピカピカの新車のようだった。 きっとマニアの方が大切に乗っているのだろう。 僕が子供のころ見たオート三輪は、どれも後ろの荷台にダンボール箱や資材を積み、車体は土埃まみれで何だかくたびれていた。 でもきっと同じ色だったと思う。 その頃のトラックには車体のカラー・バリエーションなどなかっただろうから。
当時は既にトラックも四輪車が主流で、オート三輪はけっこう目立った。 その姿を見るたび、子供心に「ボロいなあ、時代遅れだなあ。」としか思わなかった。 子供ってそんなものである。 新しいものが出ればそっちに興味がいき、古い物はただ蔑むのみ。 ところが人間歳をとるとノスタルジーというものが芽生える。 加えて元気のない今の日本。 すべてが右肩上がりだった昭和、なかでも戦後の昭和30~50年代への憧憬は果てしない。 昨今の昭和ブームは、日本人がやや感傷的になった現われか。
子供の頃はすごく大きく見えたオート三輪は、僕の背丈よりも小さくなっていた。 それはまるで、小学校の教室の机や椅子が、大人になるとすごく小さく感じられるのと同じように、僕のスケール感を狂わせた。 あの駄菓子屋のおばちゃん、優しかったなあ。 思えば僕がお金と物を交換することを覚えたのはあの駄菓子屋だった。 フェリックス・ガムやクッピーラムネ、死ぬほど食ったなあ。
僕もやや感傷的になってきた・・・。
オート三輪の歴史
日本オート三輪友の会