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バンコク最新ホテル事情2004
 久しぶりにタイに行ってきた。 成田を夕刻の便で発ち、深夜にバンコクに着く。 その日はエアポートホテルに宿泊し、翌朝チェンマイへの早朝の便で空港を後にした。 チェンマイの常宿は「チェンマイ・プラザ・ホテル」である。 このホテルに泊まるのはもう3度目である。 このホテルは僕にとっては世界でもベスト3に間違いなく入るホテルである。 まずはその価格、ツインルーム一室朝食付きが約3,600円である。 ふたりで泊まると一人当り1,800円ということになる。 チェンマイならちょっとした高級ゲストハウスでもこのくらい取られたりすることを考えると、この料金は極めて破格と言える。 部屋は値段のわりにはかなり広い。 続いて朝食ビュッフェの充実、例えばお粥だけで4種類もある。 とにかくメニューが豊富なのだ。 元来貧乏性の僕などは、ビュッフェとなるとたちどころに平常心を失うタイプなので、ついつい朝から食べ過ぎてしまって、その後の行動に支障をきたすことも少なくない。 さらには最近なかなか良さそうなスパもできたりして、流行にもそれなりに敏感なのだ。 もしあなたがチェンマイに行かれることがあったら、ぜひこのチェンマイ・プラザ・ホテルをお試しいただきたい。 むろん我々はこれからもチェンマイではここに泊まるつもりである。
 チェンマイで4日を費やした後、バンコクに戻る。 バンコクでは移動がBTS(スカイトレイン)中心になるので、ホテルは駅のそばにあることが必要最低条件である。 僕らにとって、いまだバンコクでは常宿と呼べるものはない。 ドゥシッタニ、スコタイ、メリディアンと泊まってきた僕らだったが、今回はチットロム駅そばの「アノーマ」という少々間の抜けた名前のホテルに落ち着いた。 ここは一室7,000円ぐらいと、僕らの出張時における標準的な料金で、部屋も標準的、朝食も標準的と、あまり特筆すべき材料のない普通のホテルだったが、まずまず快適であった。 行きつけのインターネットカフェが近くにあるのが一番の好材料だったかも知れない。 このネットカフェは寒いくらい冷房が効いているうえに日本語入力ができ、さらに料金も1時間あたり30バーツ(約90円)と格安なので、バンコクに来るたびにいつも利用している。 ウェブカメラ付きのマシンもあるので、インスタントメッセンジャーなどを利用して日本で店番をしてもらっていた弟とリアルタイムでの情報交換、さらに同じく日本で留守番してもらっていたたまちゃんの元気な姿もチェックすることができた。

バンコク最新ホテル事情2004_b0045944_22591150.jpgなじみのネットカフェで
東京で店番中の弟とメッセンジャーで業務連絡 ここはADSLなので応答もクイックだ
 10日間に及んだ今回の出張の最終日はオフ日である。 それまでの日々、我々は40度の酷暑のなか、自分で言うのも何だが本当によく働いたのであった。 で、ほんの少しだけいいホテルに泊まろうということで、日本を発つ直前に雑誌「エスクァイア」でたまたま見た「ザ・メトロポリタン・バンコク」に移動したのであった。 ここは以前YMCAで、部屋にバスタブすらない実に経済的な宿だったのだが、昨年末リノベーションを終え、デザインホテルとして生まれ変わっていた。 ロビーに入るなり、いかにもデザインホテルといったミニマルな空間に包まれる。 所々に配置された中国やタイのアンティークの小物や家具が、ともすれば無機質に流れがちな空間に一定の湿度を与えている。 アンティークの皿や家具、彫刻などのように人の手の痕跡が過剰なまでに封じ込められた存在は、この新しいデザインホテルのように工業的に作られた空間の中でよりそのコントラストを増す。

バンコク最新ホテル事情2004_b0045944_2334544.jpgメトロポリタンにて
ベッドカバーはタイシルク ヘッドボード上の絵はタイの現代画家、ナティー・ウッタリットの作品 ベッドサイドのBOSEのウェーブラジオはとてもイイ音でした
バンコク最新ホテル事情2004_b0045944_2354768.jpgベッドの対面はリビングスペース
造り付けのソファーは意外に快適であった テレビはプラズマではなくフラットテレビ DVDプレーヤー完備
 部屋は思いのほか広かったので驚いた。 60㎡ほどはあるだろうか。 キングサイズのベッドがさほど大きく見えないほどゆったりとした空間。 窓際には造り付けられたソファーとなぜか明朝の椅子のレプリカの組み合わせ。 僕はそれまでこのように造り付けられたソファーというのはあまり好きではなかったのだが、このソファーはなかなか心地いいものであった。 ワークスペースも機能的だ。 パソコンなどの端子もデスク上にあり、簡単に接続できるようになっている。 客室内での無線LANも可能だ。 ミニバーも充実している。 備え付けのグラス類も、ワイングラスからカクテルグラスまで、6種12脚と抜け目ない。 細長いバスルームもうまくレイアウトされている。 全面に貼られたベージュのライムストーン(ありがちではあるが)の色調とテクスチュア、決して嫌いではない。 しかし、このバスルームで一番良かったのは何と言ってもそのバスタブの形状である。 体を沈めて内部の傾斜に背中を預けても、ズルズルと滑って上半身が仰向けになることがない。 これは僕のような浴室読書家にとってはこのうえないことである。 おかげで、持参していたにも関わらずさっぱり読み進まなかったグレアム・グリーンの頁数を稼ぐことができた。 バスローブも上質なものだったが、毛足が長すぎて亜熱帯のバンコクには不向きかも知れない。 少々暑苦しく感じてしまった。

バンコク最新ホテル事情2004_b0045944_237222.jpgデスクの引き出し
色鉛筆やマーカーなどの筆記用具が充実 デザインホテルで何かをデザインするなんて、こっぱずかしくてできません
バンコク最新ホテル事情2004_b0045944_2392976.jpg最近多い、この感じのバスルーム
一見なんてことないこのバスタブが実に良かった
 ホテル内を散策してみる。 フロント横のギャラリーはアンティーク中心の品揃え。 ホテルのモダンさとは対照的だ。 ジャグジーなどの施設もゲストなら無料で利用できる。 プールサイドに設けられたメインダイニング「Cy'an」、やや軽食よりの「Glow」のいずれも、ややシンプル過ぎて若者向けといった趣き。 特に「Glow」の方はもうすぐ四十路に突入しようかという我々二人には少々気恥ずかしいぐらいであった。 一方で「Shambhala」と名付けられたスパはなかなか気持ち良さそうだった。 このメトリポリタンがあるエリアには、他にも高級ホテルが軒を連ねている。 隣は「バニヤンツリー・バンコク」で、その隣は以前宿泊した「スコタイ」である。 二人ともここで夕食をとるのにはやや抵抗があったので、他のホテルも覗いてみることにした。
 バニヤンツリー・バンコクは超高層ホテルである。 ロビーに足を踏み入れると、たちまち花の芳香に鼻腔を満たされた。 そこらじゅうにアロマを漂わせるティーライトの火が焚かれている。 また、蓮の花などを贅沢に使ったディスプレイやアレンジメントは、妻のハートをわしづかみにしてしまったようで、盛んに感嘆詞が口からこぼれる。 どうやら今夜はここで食事することになりそうである。 妻はやはりシンプルよりもゴージャスの方がお好みのようで、「Bai Yun」というヌーベル・チャイニーズのレストランに目をつけたらしい。 続いてスコタイにも行ってみた。 やっぱりここは落ち着く。 できたてのデザインホテルにはない気品、品格というものがある。
 この日は友人の店に行くことになっていたので、スコタイからタクシーに乗り、シーロム・ビレッジのアンティーク屋などを物色しながらBTSでトンロー駅そばにある「Chico」に向かった。 結果、夕食はChicoのふたりと一緒にスクンビットのタイ料理屋に行くことになった。 しかし、食事の後でバニヤンツリーの屋上展望バー「Vertigo」に行くことになり、我々はホテルへクルマで乗りつけ、高速エレベーターに飛び乗ったのであった。
 そこには驚くべき世界が広がっていた。 地上61階の屋上にも関わらず、下界と我々を隔てるのは高さわずか1メートルほどの柵のみである。 ダイヴする気になればいつでも可能だ。 柵の外側にも緩衝地帯はほとんどなく、柵際の席に陣取った我々からは、航空機に高層建造物の存在を知らせる航空障害灯に余裕で手が届いてしまう。 いずれも日本では考えられないシチュエーションである。 その場で撮影した写真ではわかりづらいが、このページの写真を見ていただければ、そのギリギリ感が少しはわかっていただけると思う。 心配された強風だが、この日は運良く無風状態であった。 もっとも強風が吹いたりすると店はクローズになってしまうという。 酔っ払いが灰皿ひとつ放り投げるだけで下の誰かが確実に死ぬ。 本来なら店に入店する前に入念な思想チェックや心理状態の確認が必要だろう。 それにしてもバンコクを完全に一望できる圧倒的な視界は筆舌に尽くしがたい。 その非常な高さも、高揚感が勝って最初は気にならなかったのだが、しばらくすると膝ががたがた震えだしてしまった。 理由はわからないが、人間が決して存在してはならない場所という感覚を覚えた。 こんな場所で楽しそうに食事し酒を飲んで笑っていたら、いずれとんでもないことが起こる。 そんな気にさえさせられる場所だった。

バンコク最新ホテル事情2004_b0045944_23115868.jpgバニヤンツリーの屋上バー「Vertigo」にて
奥で妖しい光を放っているのは航空障害灯 こんなものを至近距離で見るとは思わなかった。 筆者はこの高度でタイ・ウイスキー「メコン」のコーラ割りを飲み、世界で一番高い場所でメコンを飲んだ男となった?
 バンコクにはつい最近地下鉄も開通し、試験運行も始まった。 結局、熊谷組をはじめとする日本の企業連合は穴だけ掘らされて、肝心の車両の入札ではまたしてもドイツのシーメンス社に敗れ去った。 土方仕事だけやらされて、おいしいところはみんな持っていかれた格好だ。 日本企業の国際競争入札での無策はさておき、バンコクはもはや東京よりお洒落かも知れない。 少なくともホテルにおいては。 そんなことを感じさせられた今回の滞在であった。(2004/5/12出稿を再録)
by theshophouse | 2004-12-16 23:18 | Odyssey
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