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カテゴリ:Odyssey( 89 )
旧東海道にて
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 今年もまた立春の日に七福神参りに行った。 恒例である。
 七福神参りに行くようになって、特別何か良いことがあったかと言われれば決してそんなことはないのだが、反対に特別悪いこともないので、そういう悪いことが起こらないようにしてくれていることに感謝ということで行く。
 東海七福神はその名の通り旧東海道を巡る。 途中、品川寺で午後1時から護摩焚きがあるので、そこから逆算してスタート地点である品川神社には12時過ぎに行く。 一年に一度、この旧東海道を歩くのだが、ここにはまだ昭和の原風景どころか江戸の香りも残っていて、毎年新たな発見がある。
 古きを訪ねて新しきを知る。 それは日進月歩のテクノロジーの進化や新たな事象についていけない自分に折り合いをつけるための言い訳でもある。
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            品川寺にある「タラパット」というタイの僧侶が使う団扇


東海七福神
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by theshophouse | 2010-02-11 22:14 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 番外編 ナイト・サファリ
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 たった数日の旅行でよくもまあこれだけ書くことがあるものだと自分でも呆れるのだが、実際この他にもいろんな場所に足を運んだし、いろんなものを食べたし、これでもだいぶ取捨選択して書いているつもりなのである。
 ナイト・サファリについては本編に入れるほどではないのだが、面白かったので備忘録として残しておくことにする。 もしあなたがシンガポールに行ったことがなく、これから遊びで行く機会があるのなら、ジュロン・バードパークシンガポール動物園、そしてナイト・サファリには必ず行った方がいいと思う。 今回時間が足りずシンガポール動物園には行けなかったのは本当に残念だ。
 ナイト・サファリは貴重な体験だった。 ガイドによる案内を聞きながらトラムで園内を一周した後、今度は徒歩で見て回る。 突然林の中からのっそりと現れるバク。 聞いたこともないライオンの遠吠え。 歩いている自分の両足の間を巧みにすり抜けて低空を飛び回るオオコウモリ。 暗すぎてほとんど映像に記録することはできなかったが、夜の間しか見ることのできない動物たちの生態は時が過ぎるのを忘れさせてくれる。 気がつくと深夜の12時、閉園の時間である。
 惜しむらくはバードパークもナイト・サファリも、そしてたぶんシンガポール動物園も売店に気の利いたお土産が売ってないことである。 とにかく大の大人の食指が動くようなお土産が皆無なのだ。 そしてそれは動物園のみならず、シンガポールという国全体としても同様で、「これぞシンガポール!」といったお土産はない。 もちろんマーライオンのミニチュアみたいなので良ければいくらでもあるのだが、極論すればマーライオン関連以外のお土産はないと言っていい。 最後までまったくお土産を買うことなく最後の空港内免税店にすべてを賭けていた我々にとって、殺伐とした出発ターミナルの惨状は全身に脱力感をもたらすものだった。
 今のところそれはすべてにおいて出来すぎた国、シンガポールの唯一の弱点である。


果実を貪るオオコウモリ。 実はジョギングコースの駒沢公園にもたくさんいたりするのだが、これだけ近くでお目にかかるのは初めて。


コツメカワウソの一家。 サービス精神の旺盛さではナイト・サファリ随一。
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by theshophouse | 2010-01-27 00:25 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その10 明るい北朝鮮(エピローグ)
 この地に住む連れ合いの友人曰くシンガポールは「明るい北朝鮮」だという。
 たしかにシンガポールは開発独裁国家である。 新聞ひとつとっても英字紙「ストレイツ・タイムズ」、中国語紙「聯合早報」、マレー語紙「ベリタ・ハリアン」などがあるが、すべてシンガポール・プレス・ホールディングス社の新聞であり、この新聞社は常に政府と共同歩調だそうで、批判的な記事は皆無なのだそうだ。 唯一この新聞の一社独占供給体制の例外がタミル語紙の「タミル・ムラス」。 それでもこんな状況だとすぐに言論統制国家のレッテルを貼られてしまいそうだが、実際はそうでもないようで、基本的には政府のやることなすことに国民が全幅の信頼を寄せているので無問題なんだという。
 北朝鮮とシンガポールの大きな違い(笑)は何といっても建国の父のクオリティー、これに尽きる。 ご存知のとおり金日成はアレだが、リー・クアン・ユーはこの小国にはもったいないほどの辣腕政治家である。 クリーンキャンペーンの実施、バイリンガル政策、外資誘致政策、交通渋滞緩和政策といった極めて今日的な諸政策を世界に先駆けて実施し、シンガポールの基礎を築いた。
 クリーンキャンペーンは自ら先頭に立ってゴミ拾いを行ない、阿片窟と売春宿を根絶、ボウフラを発生させる水溜りを放置したら処罰の対象となるなど公衆衛生について様々な罰金制度を導入。 その結果シンガポールはご存知のように道端にゴミがなく、風俗産業もなく、また赤道直下の東南アジアの国でありながらほとんど蚊がいない国となった。
 バイリンガル政策については多民族各々の言語とは別に英語を共通語として普及させて民族融和をはかると同時に、海外との人的交流の障壁をなくし、グローバルビジネスの拠点としての今のシンガポールの地位を確立。 その結果シングリッシュが生まれた。
 国がキレイになって国民に教育が行き届くと次は仕事が必要になる。 そこで、外国資本を誘致するため法人税を大幅に引き下げて優遇した結果、アジア進出をもくろむ数多の世界的な企業が拠点を置き、多くの雇用も生まれた。
 国民の所得が増大し生活水準の上昇とともに狭い国土に自家用車が溢れ交通渋滞が起こってくると、市内中心部への乗り入れ規制(一台のクルマに4人以上乗車もしくは通行許可証を購入)を行ない、またクルマの購入に許認可制を導入するなど、極めて先進的かつ斬新なシステムを導入してこれを解決してしまった。
 一方、偉大なる北朝鮮の領導者は毛沢東に習ってコメの増産のために本来なら30cm間隔で植える稲を20cm間隔で植えて、単位面積当たりの収穫を1.5倍にしようという食料増産計画を実行したが、密集栽培が災いし、逆に日当たりと風通しが悪くなって収穫が激減し飢饉を招いた。 しかも、凶作の原因が栽培方法にあることに気づかず、この密集栽培は国策で今も続けられ、国民を慢性的な飢餓状態下に置き続けている。 その他の国家的な政策としては、日本人をはじめとする外国人の組織的拉致監禁政策、偽造紙幣の開発と流通政策、覚醒剤の製造販売、核開発政策(たぶん核実験にも成功していない)など、字面だけはシンガポールにひけをとらないが、要するに犯罪立国である。
 同じ独裁でもシンガポールは良い独裁。 だが、いくら良い独裁でもやっぱり独裁国家にはガス抜きが必要である。 そのガス抜きさえない北朝鮮では自らが「ガス」になる他ないので、次々脱北者が国外に逃亡している。
 罰金大国シンガポールではうかつにゴミも捨てられないし、ツバも吐けない。 立ちションなど以ての外だし、無許可では犬も飼えない。 横断歩道以外で道を渡れないし、迂闊に煙草も吸えない。 さぞかし息苦しい世界だろうと思いきや意外や意外、灰皿などない道端でくわえ煙草の人は昨今の東京などよりたくさん見かけるし、その足元を見てみると吸殻がふたつみっつ落ちているなんてこともけっこうある。 灰皿付きのゴミ箱など置いてあろうものならそれはもう砂漠のオアシスの如く吸殻の剣山が形成されていたりする。
 たとえそれが吸殻の山であろうとも、やっぱり僕は人間臭い場所が好きみたいだ。
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(LITTER FREE = ゴミから解放された)
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by theshophouse | 2010-01-26 00:19 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その9 ザ・フラトンホテル
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 今回宿泊したフラトンホテルは、自らプロフィール欄に書いているように、好きな建築要素であるドリス式オーダーが特徴的なホテル。  1928年に建てられ、1996年までGPO(中央郵便局)として使われていた歴史的な建物を全館リノベーションし、2001年に「The Fullerton Hotel」として生まれ変わった。 その名前は英国初代海峡植民地総督であるロバート・フラトンにちなんだもの。 こういう建築がその用途が変わっても次世代へ受け継がれていくというのはとても素晴らしいことである。
 リノベーションで各部屋のバスルームをデザインしたのはフィリップ・スタルクだというが、およそスタルクらしいデザインのかけらも見つけることはできなかった。 でも、そういう一見アノニマスなデザインも上手にできるところがスタルクが他のデザイナーと違うところでもある。
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 元々郵便局として使われていたホテルとあって、ちょうど今はそのファサードの一部を残して完全に取り壊された東京・丸の内の中央郵便局(CPO)の「保存」のされ方とどうしても比較してしまう。 もちろんそれぞれの建築の歴史的価値の違いや地震国日本における歴史的建造物の保存の難しさといった問題もあるだろうが、東京のCPOはこういう姿になるらしい。 安藤忠雄の表参道ヒルズにおける同潤会アパートと同じ「保存法」である。
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 都市をヒューマンスケールで読み解くなら、かつての郵便局の建物がそのまま低層部として残されるこうした保存法は、地震国日本にとって歴史的建造物保存のひとつのソリューションには違いない。 実際郵便局の前を歩く人々は、そこに以前と何ら違わぬ郵便局の存在を認めるだろうし、なかには僕みたいにピチカート・ファイヴのこのPVを思い出す人もいるだろう。



 しかし、やはり最善の保存は出来る限りそのまんまであること。 フラトンホテルは往時のフラトンビルディングの頃のポストカードと何ら変わっておらず、当時海沿いにあった建物は、その後海岸線が埋め立てられてマーライオン・ピアやワン・フラトンが造成されたためやや内陸に移動した。
 シンガポールにおいては、古いまま残すものと新しく造るものとがうまく住み分けられており、都市景観のなかでそれらがうまく調和している。
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 僕たちは2階に泊まっていたのだが、或る夜ちょうど部屋の真下に当たる1階のレストランでどこかの会社がニュー・イヤー・パーティーかなにかやっていて、客室に居てもやたらに騒がしかったのである。 夜の12時を過ぎても騒ぎはおさまらず、このままではとても眠れそうになかったので階下のレストランにクレームしに行ったのだった。
 レストランの入り口にホテル側のスタッフがいたので、ちょうど真上の部屋に泊まっているのだがうるさくてとても眠れない旨を告げると、僕の話が終わるか終わらないかのうちに何号室に泊まっているのか訊いてきた。 部屋番号を告げると、「今夜だけのパーティーで午前1時には終わる予定です。 本当にお騒がせして申し訳ありません」とのこと。 判で押したような対応は僕らの他にもクレームが来ていることを思わせた。 なにせ2階の自分の客室のみならず、エレベーターホールにいても重低音のビートが響いてくるのである。 ともあれ、あと数十分で終わる騒ぎだし、部屋番号も訊かれたし、もとよりクレームするのも苦手な性分ゆえ、何らかの「見返り」を期待しつつ部屋に引き揚げた。 ほどなくパーティーも終わり、ぐっすり眠ることができた。
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 その翌日。 夕方外出から戻った僕らをベッドの上で待っていた「見返り」の正体がこれ。 郵便配達夫のコスプレをしたフラトンホテル・オリジナルのテディ・ベアで、サファリジャケット風味のユニフォームの背中にはポストマスターの文字。 「これかよ!」と僕。 一方、「カワイイ!」と連れ合い。 さらなるサプライズを期待しつつ、念のため郵便配達夫のショルダーバッグの中をあらためてみたが、空だった。


The Fullerton Hotel Singapore
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by theshophouse | 2010-01-24 00:08 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その8 WiFi天国
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 シンガポールは近未来的なユビキタス社会に最も近い都市かも知れない。 都市部はシンガポール情報通信開発庁(Infocomm Development Authority of Singapore, IDA)が提供する「Wireless@SG」という無料のWiFiネットワークがほぼ網羅しており、誰でも自由に使えるようになっている。 この「誰でも」というのはシンガポール国民のみならず、この地に足を踏み入れた旅行者も含まれる。
 登録には現地でSMSを受け取れる携帯電話の番号を入力する必要があり、接続に必要なパスワードが登録後すぐ携帯にSMSで送られてくる性質上、渡航前に日本で登録することはできないが、「iCELL」というキャリアを選び、サインアップ画面で携帯電話番号の入力欄にでたらめな番号を書いてとりあえず登録し(当然SMSでパスワードは送られてこない)、その後「Forgot My Password」のページで空欄を三つ埋めればパスワードを教えてくれるというので登録しておいた。 今回現地にはモバイルノートは持ち込まずiPod Touchのみを持参。 iTunesであらかじめこのWireless@SGの接続用アプリ「SG Wireless」(無料)を落とし、取得したIDとパスワードを設定しておいた。
 「これでもうシンガポール全土で無制限に繋ぎ放題」とばかりに意気揚々と乗り込んだチャンギ空港だったが、構内でアプリを起動するとさっそくWireless@SGの電波をガンガン拾っているにも関わらず何故かウェブサイトは閲覧できない。 後でなんとなくわかったのは、このWireless@SGの三つのキャリア(iCELL、QMax、SingTel)のうち、僕が事前に登録する時に選んだiCELLのスポットでこのアプリを起動した場合はサクセス画面が出るのだが、それ以外のキャリアのスポットでは電波は拾っていてもエラー画面になってしまうということ。 この場合は構わずにブラウザを立ち上げればログインを要求してくるので、その画面でまずキャリア「iCELL」を選択し、日本で登録しておいたIDとパスワードを入力すればOK。 やや面倒臭いので、パスワードはともかく事前登録時の任意のIDは短いのにしておいた方がいいかも。
 と、最初にやや苦労はしたものの、これにてクリア。 実際Wireless@SGのスポットはどこにでもあるのでかなり遊ばせてもらった。 iPhoneやBlackBerryのようなスマートフォンの普及が進むなか、シンガポールは既に先進的なインフラを実現している。 都市国家の強みで早くから実験的な試みがさまざまな分野で行われ、その多くが血肉となって今のシンガポールを形成している。 Wireless@SGのような取り組みは観光立国を目指す日本としてもぜひ取り入れて欲しいアイデアである。


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by theshophouse | 2010-01-22 01:57 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その7 Arab in Asia
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 この日は連れ合いがシンガポール在住の友人と会いにオーチャード・ロードに行ったので、しばし自由行動である。 考えた末、アラブ人街に行ってみた。 MRTのBugis(ブギス)駅で下車し、この街のランドマークであるサルタン・モスクを目指す。 ブッソーラ・ストリートはショップハウスとモスクと椰子の木という、いかにも食べ合わせの悪そうな三要素が混在している。
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 ふと見ると、通りの名前も完全にアラブである。 そこだけ見ていると、一瞬自分がアラブの国に来たかのような錯覚を覚える。 とはいえ異国の中でまた異国に出会い、自分が足場をなくしたような感覚は不思議と心地良い。
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 シンガポールは「ガーデン・シティー」とも呼ばれる。 その名の通り、亜熱帯の草花や樹木が街路を埋め尽くしていて気持ちいい。 都市の中にこれだけ緑が多いのもシンガポールならでは。 暑い中ジョギングしてる人もけっこう見かけた。
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 このアラブ人街にもたくさんのショップハウスがある。 そのうちひときわ大きな一軒がなかなかいい感じのカフェになっていたのでここでランチタイムにした。 通り沿いに大きなオーニングがせり出していてオープンカフェみたいになっている。 フィッシュ&チップスとタイガー・ビールを注文。 真昼間のビールは旅先の醍醐味だ。 ほどなく運ばれてきたフィッシュ&チップスは絶品だった。 冷凍疑惑のギザギザポテトはさておき、タルタルソース付きの白身魚のフライは味もボリュームも申し分ない。 もっとも、80年代の終わりにロンドンに2年いた連れ合い曰く「フィッシュ&チップスはそれを包んでる新聞紙のインクの香りという至高のスパイスがなきゃ駄目。 その新聞もサンとかデイリー・ミラーみたいなタブロイドに限る」んだそうで、もし二人で食べてたらその場であれこれ異議申し立てされて気分を害していたかも知れない。
 この店、帰国して調べてみたら「BluJaz Cafe」というジャズのライヴなんかもやる店だった。 今度シンガポールに来たら是非行ってみたい。
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 食後、このアラブ人街でもとりわけ細い「ハジ・レーン」を歩いていると、水煙草を出す店があったので一休みしていくことにした。 水煙草自体は何度か経験があるのだが、こういう本格的なのは初めて。 一見してノリの良さそうなオーナーに勧められるままカーペットに腰を下ろす。 「どこから来た?」というオーナーに「トーキョーから」というと、「おまえは俺のジャパニーズ・ブラザーだ」と言う。 どうやらこの一服は義兄弟の盃代わりのようだ。 ところがこのオーナー、頼みもしないのに店に居合わせた他の客を捕まえては「これは俺の嫁」「こいつは弟」と次々に紹介する。 心中でひそかにこのオーナーを「アラブ人街の笹川良一」と命名した頃、「待ってろ、今おまえのためにスペシャルなやつを用意したるから」と、ようやく水パイプの準備に取り掛かった。



 ほどなく供された水煙草。 吸った煙は一度水をくぐるのでタールのような不純物を肺に取り込むことはない。 独特のフレーバーは水煙草ならでは。 ちゃんと吸い込んで立派な煙を吐き出すにはけっこうな肺活量が必要だ。 自分が一服してるところを貼ってもアレなんで、オーナーと常連で年齢不詳のハラル系女子に一服キメてもらった。
 この水煙草、基本的に真昼間から仕事とかフケて、怠惰なお仲間と数人で甘ったるいチャイでもすすりながら虚空を見つめてやるような代物。 僕みたいに一人でマジメにビデオなんか撮りながらやるもんではないということを付け加えておく。


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by theshophouse | 2010-01-20 01:56 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その6 ラッフルズ・ホテル
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 ラッフルズ・ホテルに行った。 ラッフルズは以前に店のポストカードのネタにさせていただいたこともあるぐらい憧れていたホテル。
 車寄せに滑り込んだタクシーのドアを開けてくれたのはあの名物ドアマン。 とはいえ、ホテルのゲストでもない我々はレジデンシャル・エリアに入ることはできず、当然ロビーにも立ち入れない。 仕方なくアーケードの方に行ってみた。 以前から東南アジア各地でコロニアル・テイストを現代風にアレンジした服を売っているお気に入りのブランド「British India」「ARMANI/CASA」がテナントとして店を構えていた。
 ラッフルズ・ホテルのミュージアムは必見である。 以前宿泊したここラッフルズと同じくサーキーズ兄弟の手によるラングーンのストランド同様、ラッフルズもこの地を日本が「昭南島」として統治した頃には接収されて「昭南旅館」と名前を変えており、当時の日本の軍票である通称「バナナノート」や「大日本郵便」発行の切手などが展示されている。 また、古い写真や備品、装飾品に加え、かつてこのホテルに宿泊したモームやコンラッド、キップリングら数多の文豪の直筆の書簡、1989年から1991年にかけてホテルを完全休業して行われたリノベーションの時の写真展示も興味深い。
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サマセット・モームのサインが入った書簡や著作など
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古い旅行のパンフレットやポストカード
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バナナノートと呼ばれた日本の軍票や切手
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 かつて村上龍はこのホテルを舞台にした同名の小説を世に送り出したが、いくらバブル全盛の世相だったとはいえ、なんともお粗末な作品を上梓したものである。 後に小説の中の役柄そのままの某プッツン女優が主演して映画化されたことが彼の黒歴史を更に補完した。
 僕がこのホテルの存在を知ったのもこの作品が発表された頃。 どうみても物書きとしての才気に溢れているようには見えないのに常に流行作家でいられる彼の処世術には屈折した憧憬の念を禁じえないが、それでも何年かに一度「愛と幻想のファシズム」みたいな作品で作家としての帳尻を合わせてくるテクニックには長けている。 その「思いっきり勉強して調べまくって書きました」感にはドン引きさせられることもしばしばだが、ツボに入ると面白いこともある。 そのアプローチはいわゆる純文学の作家のそれとはほど遠い。 つまり作家個人の心の内奥から湧き出してくるようなクリエイションといったものとは対極にある。
 純文学の作家をアーティストとすれば、商業作家はデザイナーと置き換えることができるかも知れない。 情報の洪水の中から必要なものをインプットし、自分の中のフィルターを介してアウトプットする。 村上龍のような商業作家においてはこの「自分の名前のついたフィルター」を常に目詰まりのないような状態に保っておくことが全てであり、時には「ラッフルズホテル」のように時代に翻弄されて陳腐な作品を残すことを恐れてはいられないのだ。
 なぜこんなふうに話がそれたかというと、この旅に持参していた藤原伊織の短編集のなかで、「トマト」という、人魚が主人公でシンガポール・スリングが登場するショート・ストーリーとたまたま出会ったから。 こうした偶然にはしばしば遭うものだが、文庫にしてたった8ページに過ぎない詩のような小品が、かつて読んだ類似の素材を扱った労作よりも遥かにすんなりと心に入ってきたのが可笑しかった。 当然のことながら、作品の良し悪しは尺に比例しない。 そして、良い作家は一部の例外を除いて早世する。
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 ホテル・ショップのアイテムの充実ぶりは随一。 もちろん僕らのように、ここのゲストではなくてもこのショップにホテルグッズを買いに来る観光客が多いのを見越しての品揃えであろう。 ちょっとしたお土産を買い、2階のロング・バーへ。 シンガポール・スリング発祥のバーである。
 イイ味を出しまくっている懐古調のシーリングファンが緩やかな風をフロアへと送るロング・バー。 驚いたのは床一面に散らばったピーナッツの殻。 それはまるでメジャーリーグのベンチの床に散らばるヒマワリの種の殻のようだ。 聞けばここでは付け合わせのピーナッツの殻を床に放るのがマナーだそうで、ポイ捨て禁止大国シンガポールにおける唯一の治外法権。 それは「ファイン・カントリー」シンガポールにおける壮大なカタルシスの聖域なのだ。
 シンガポール・スリング自体は学生の頃から何度も飲んだことがある。 だいたいどの店もシリンダーグラスに入ってきたと思うが、ここロング・バーでは専用の「スリング・グラス」に注がれる。 1915年にこのホテルのバーテンダーNgiam Tong Boon(厳崇文)によってつくられたジン・ベースの甘いトロピカル風味のカクテル。 数多の名カクテルのご多分に漏れず、シンガポール・スリングのレシピにもさまざま改良が加えられて今の味になったのだという。 一次ソースはしばしば二次ソース以下にとって代わられるのが世の趨勢。 しばし堪能。
 周りを見渡してみると、ほとんどすべての客がシンガポール・スリングを飲んでいる。 あちこちで記念写真のフラッシュが焚かれている。 床一面に散らばったピーナッツの殻がそうさせるのか、ストランドのバーにあったような静謐はここにはなく、どこか弛緩した空気に包まれている。 だが、それがいい。


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by theshophouse | 2010-01-18 00:59 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その5 ショップハウス・ハンティング
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         ブレア・ロードのショップハウス レジデンスとして使われている
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  ケオン・サイク・ロードのショップハウス 奇妙なデザインの現代建築との近未来的混在
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    ジョー・チアット・ロードのショップハウス こういうモダンな内装のものは少数派


 今回は純粋な観光旅行だったのだが、ひとつだけ目的があった。 それはおそらくはシンガポールに世界で一番多く現存しているであろう「ショップハウス(Shophouse)」を見て歩くことだった。
 ショップハウスは建築形態からの呼称であり、そこに住まう人々の名前から「プラナカン・ハウス(Peranakan House)」とも呼ばれる。 プラナカンとはマレー系先住民と華僑との婚姻によって生まれた混血のこと。
 これまでもペナン、マラッカ、クアラルンプール、横浜中華街でショップハウスを見てきたが、中華街の偽物?を除けばいずれもマレーシア国内である。 マレーシアからジョホール水道を渡った先のシンガポールにおいて、我が愛するショップハウスはどういう処遇を受けているのだろうか。 これまで見てきた土地でそうだったように半ば取り壊されつつあるのだろうか。 はたまたその歴史的価値を再評価されて美しさを保ったまま保存されているのだろうか。 そんなことを考えながらデジカメとハンディカムを抱えて街に出た。
 果たしてシンガポールはショップハウスだらけだった。 しかし、一見どれも同じように見えるそのスタイルにもエリアによって微妙な差があることに気づく。 住居として使われることで建てられた当時の素の面影を残しているショップハウス、現代のコマーシャリズムの只中でも当時のままに現役のショップハウス、やや異文化の干渉を受けたショップハウス。 前庭があって塀に囲まれているのは同じ長屋形式でもショップハウスではなくタウンハウス(テラスハウス)で、こちらは純然たる住居である。
 最初こそ久しぶりのショップハウス群に興奮気味だった僕らだが、その数があまりに多いと知るや最初の興奮は次第に冷めていった。 しかし、それでもやっぱり面白いショップハウス。 あらかじめ調べておいたエリアをタクシーでハシゴしながらそのスタイルを、色彩を、時にケバすぎる装飾、住人或いはそこに居る人の姿をハンティングしていく。 もっとも、このショップハウスが素晴らしいのはファサードよりもインテリア、内部空間なのだが、今回はシンガポールという大都市にあるショップハウスということもあって、以前ペナンやマラッカで見た吹き抜けやオープンエアの中庭といった大空間を見つけるのは難しそうである。 それにしても、自分で言うものなんだが完全に趣味の世界。 このこだわりを第三者に伝えるのは非常に難しい作業なのであきらめる。
 ご興味がおありの方は撮影してきた以下の動画を。



福建語で「五脚基」、マレー語で「Kaki Lima」、英語で「Five foot way」と呼ばれるショップハウスの軒下の連続歩廊を歩きながら撮影。 この空間は僕の大のお気に入り。






ショップハウスを探せ!
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by theshophouse | 2010-01-17 10:12 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その4 Jurong Bird Park
 なんだかんだいって仕事絡みじゃない海外旅行は新婚旅行以来だったのだが、行く前から今回の旅行のハイライトになるだろうと思っていたのがジュロン・バード・パーク。 鳥好きとしては絶対に外せないスポットである。
 午前中からいろんなショータイムがあるというので、前日の移動の疲れが残るなか早朝に起きて朝食を済ませタクシーでバードパークへ向かった。 シンガポールのタクシーは比較的安いので観光にも十分使える。 ホテルから30分ぐらいで到着。 園内を一周するトラムの乗車券と餌付けの権利がついたチケットを購入。 と、ここまで書いたところで動画の存在を思い出したので続きは園内を撮影した動画で。 百聞は一見にしかず。













 以上、大人も楽しいバードパークでした。
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by theshophouse | 2010-01-15 09:34 | Odyssey | Comments(0)
シンガポール旅行記 その3 マーライオン
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 チャンギ国際空港には夕方着いた。 真冬の東京から来たせいもあるが、赤道直下の国だけあって機外に出るとさすがに暑い。
 ホテルまでMRT(地下鉄)で行ってみることにした。 事前に何も調べて来なかったので、しばし券売機とにらめっこ。 なんでも運賃とは別に1S$支払い、スタンダードチケットというSuicaみたいなICカードを購入させられる。 改札でそれをリーダーに接触させてゲートを開ける。 目的の駅で改札を出る時も同様である。 当然手元にチャージされていないICカードだけが残されるのだが、これを券売機に入れればデポジットの1S$が返却される仕組み。 何だか面倒くさいシステムではある。
 車内。 日本でも最近いろんな案内表示はだいたい日本語、英語、中国語、韓国語とマルチリンガルになっているが、四ヶ国語があるというだけでデザイン的にシンプルになりようがないので個人的にはウザいことこのうえない。 日本語と英語だけでいい。 どうしても四ヶ国語が必要なら独断と偏見で日本語、英語、タイ語、スペイン語とかの組み合わせがクール。 日本が外国人に中国とか韓国みたいな国と混同されないためにもマルチリンガル表示は止めるべきだと思う。
 ところがシンガポールにおいては国内からしてマルチリンガルなのである。 基本的にすべての案内表示には英語、マレー語、中国語、タミル語が併記されている。 ほとんど日本人しかいない日本と違い、シンガポールの場合は様々な人種がモザイクのように混在する多民族国家なので、この表示は民族構成の実体そのものである。
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 ホテルは「ラッフルズ・プレイス」駅を下車後、徒歩3分ほどのところにある「ザ・フラトン・シンガポール」。 チェックインして荷物を解き、夕食を摂るために近くのホーカーズ(屋台村)、「ラオ・パ・サ・フェスティバル・マーケット」に行った。 とりあえず定番の「ハイナン・チキンライス」「フライド・ホッケン・ミー」「ラクサ」、このあたりからトライしてみる。
 ハイナン・チキンライスは中国の海南島発祥の蒸し鶏添えのチキンライスで、タイではこれを「カオマンガイ」と呼ぶ。 勝手知ったる味だが、カオマンガイが熱々の蒸し鶏なのに対してこのハイナン・チキンライスはやや冷製といったところ。 個人的には熱々のカオマンガイに慣れている分、やや違和感。 ラクサはどこか坦々麺的な感じで、ココナッツミルクとチリペーストの入ったスープにビーフンの麺が入った汁そば。 可もなく不可もなくといったところ。 「フライド・ホッケン・ミー」はその名前通り「福建式焼きそば」だが、既にお店が閉まっていたので食べられなかった。 ビールはもちろん干支にあやかってタイガービールである。



 八角形の特徴的な外観を持つこのホーカーズはビクトリア朝時代(!)に建てられたかつての魚市場。 週末には中央のステージでバンド演奏なども行われていて賑やかである。
 食後、徒歩でクリフォード・ピア、ワン・フラトンと散策しつつマーライオンを目指した。 普通に撮ってもお馴染みの写真になってしまいそうだったので、ディテールに迫ってみた(後日撮影)。
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 このマーライオン、言わずと知れたシンガポール(サンスクリット語でライオンの町の意)のシンボルなのだが、エジプトのスフィンクスに始まり日本の神社の狛犬へと続く獅子神の仲間。 シンガポールの「シンガ」はタイではビールでおなじみの「シンハ(Singha)」、沖縄のシーサーと同じ。 つまり獅子、ライオンである。 マーライオンの「マー(Mer)」の部分はマーメイドの頭文字とも海そのものを指すものとも言われる。 誰が呼んだか、よく「世界三大がっかりスポット」のひとつとして紹介されるが、2002年に今のマーライオン・ピアに移設されてから人気も回復傾向にあるという。 個人的には立派な観光スポットだと思った。
 今回ハンディカムを持ち込んだので、陸と海からそれぞれマーライオンにアプローチしてみた。 海からは珍しい正面からのショットを見ることができる。 近くにはマーライオングッズ専門のお土産屋があったので入ってみたのだが、中に入ったとたん店員のオバちゃんに怪しい日本語で密着マークを受けて削られた挙げ句購入を断念。 お土産のクオリティは著しく低かった。 マーライオンという世界に誇る素晴らしいシンボルがありながら、それをまったく生かしきっていないお土産のクオリティー。 シンガポール政府はこの点もう少しマジメに考えてみたほうがいいと思う。 もし日本だったら数多のゆるキャラが名乗りを上げてお土産市場は活況を呈していることだろう。



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by theshophouse | 2010-01-13 12:34 | Odyssey | Comments(0)



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