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カテゴリ:Movie( 14 )
映画「亡国のイージス」
 水曜日の昼下がり。 まずその客層に驚いた。 僕らが行ったシネコンの客席は老若男女入り乱れており、日本の平均年齢を基準に、有権者以上の世代から無作為抽出したような印象だ。 とりわけ一人で観に来られている高齢の方が多いのである。
 映画はなかなかよく出来ていると思う。 日本映画としては破格の重量感もある。 ただ、あれだけの内容を2時間ちょっとで表現し尽くすのは所詮無理があったと思う。 原作を読んだ僕は、おそらくは当初より短く編集されてしまったであろうそのシーンが持つ深い意味を汲み取ることができるが、原作を読んでいない人にとっては解りづらいシーンも多い。 今回「初めて劇場で邦画を観た」妻がそうだったのだが、帰りのクルマの中では、妻が映画「亡国のイージス」に抱いたいくつかの疑問に答えを用意するのが僕の役目になった。 もう1時間あれば各シークエンスはさらに深まり、登場人物の人間関係はより明確になり、興行的には自衛隊の全面協力というハード面がやたらと強調されたが本質的には人間のドラマであるこの作品を、更に味わい深いものにしたであろうと思う。 如月とジョンヒが交感するシーンなどは、その前段の部分から明らかに説明不足で、表現しきれているとは言い難い。 そういった意味で、後々に「完全版」や「ディレクターズ・カット」のDVD化を是非期待したいものである。
b0045944_22464948.jpg 映画それ自体は、真田広之でもっているという印象が強い。 本作において、真田はほとんどダイ・ハードのブルース・ウィリスである。 原作の方が、如月 行(一等海士)と仙石恒史(先任伍長)の二人を中心とした群像劇なのに対して、映画では真田演じる仙石恒史が主人公である。 小説のなかでの仙石先任伍長のイメージとはややズレがある真田だが、映画を観終わる頃には先任伍長イコール真田となってしまうあたりはさすがの力量である。

 監督は阪本順治。 デビュー作の「どついたるねん」ぐらいしか観たことないが、どうなんだろう。 もう少し彼の作品観てからでないと何とも言えない。 個人的にはラストシーンで2つの消化不良が発生してしまった。
 ひとつめは真木蔵人が搭乗した戦闘機があっさり攻撃を中止して引き返したシーン。 ここの演出はもうちょっと勿体つけても良かったんじゃないかと思う。 せめてパイロットが安全装置を外してトリガーに指をかけるぐらいのところまでは、クサいハリウッド的演出と言われようがやるべきではなかっただろうか。 僕には、真木がミサイル撃つ素振りさえみせないままUターンしたようにみえて物足りなかった。
 それと、ラストシーンでの仙石の手旗信号のシーンだが、何というか、少々間が抜けた映像に見えてしまった。 偵察衛星からその手旗信号が見えるシーンも同様である。 原作に忠実なシーンではあったが、映像表現としてもう少しどうにかできなかったものだろうか。 似たようなシーンは「ザ・ロック」のラストにもあって、ニコラス・ケイジが発炎筒で仲間に無事と反乱鎮圧を知らせるのだが、結局味方の戦闘機に爆弾を落とされてあわや死にそうになってしまう。 あのシーンとどうしても比べてしまい、またしても物足りなさを感じてしまうのだ。
 とはいえ、こうしたハリウッド的演出に慣らされちゃってる自分っていうのもどうかと思う。 日本映画にはやはり日本映画としての帰結があって然るべき。 この「亡国のイージス・ラストシーンにおける2つの未消化部位」については映画をご覧になった皆さんの意見を広く伺ってみたいと思う。
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by theshophouse | 2005-08-05 22:54 | Movie
わが家の犬は世界一
 5月11日、新宿東口の武蔵野館に「わが家の犬は世界一」という中国映画を観に行った。 タイトルだけを見ると、空前のペットブームに沸く日本に、ついに中国産ペット映画が上陸か、といった風情だが、その内容はペットを媒介として見る現代の中国社会とその庶民の日常生活のありようが淡々と描かれた小品といった印象であった。
 主人公の家族の母親が、散歩中に未登録の飼い犬カーラを公安に摘発没収され、翌日の夕刻までの18時間以内に驚くほど高額の登録料を払い込んで登録を完了しないと犬が食肉として処分されてしまうというデッドラインが設定された状況で、父親を始めとする家族が「わが家の犬」を取り戻すために奮闘する、というのがストーリーの骨格。 これがハリウッド映画的演出だったとしたら間違いなくノンストップペット奪還ドタバタアクション的なものになっていただろう。
 このように「残り時間」がキーになっている映画であるにも関わらず、この映画には時計が映し出されるシーンが一つもない。 時々画面が暗転して字幕で「あと○時間」と表示されるのみである。 このあたりは悠久の大陸的時間軸が現存する中国ならでは。 あるいは主題はそこにはないのだという作り手の意思表示か。 ハリウッド演出だったらデジタル時計の数字が画面いっぱいにアップされて、観客に常にタイムリミットを意識させ続けるか、或いは「24」のように画面上に残り時間がスーパーインポーズされるかのどちらかだろう。
 残り時間が確実に少なくなっていくなか、主人公の父親は高額な登録料はとても払えないとみるや公安に対して、コネ、裏取引、替え玉、強行突破、ありとあらゆる手を尽くすうち、息子は警察沙汰に巻き込まれ、妻からは愛人の存在を疑われて、一気に家族崩壊の危機に陥る。 むしろ作者の力点が置かれているのはこちらの方か。 果たして家族の、そして愛犬カーラの運命は・・・。

 中国や韓国ではイヌのことを「狗」と書く。 ケモノ偏だ。 彼らにとってケモノは飼うのではなく狩って食うものなのだろう。 だから彼らは猫も食う。 一方日本でイヌは「犬」だ。 「犬」という字意からも「人」に寄り添う存在であることがわかる。 だから日本人は犬を食べない。 食文化の違いと言えばそれまでだが、犬はやはり食うべきではない。

 エンドロールを見終えて外に出ると待合室に30~50代のおねえ~おばちゃんが群れてムンムンしていた。 その時までは気づかなかったのだが、隣のスクリーンではビョン様の映画をやっているらしい。 せっかく単館公開にふさわしい雰囲気の作品を観て余韻に浸ろうとしていたのに、暗がりを一歩出た途端に韓流マンセーのおばちゃんによって、その余韻は一瞬で駆逐されてしまった。 まあ、いかにビョン様がごく一部のおばちゃんたちの間でカルト的な人気を博していたとしても、キャパの大きなスクリーンでは採算が合わないので、わざと小さなスクリーンで公開して毎回立ち見を出して、場外の評判までも煽ろうとする配給元の姑息な魂胆がミエミエだ。 翻って言えば、韓流人気も底が見えてしまい、配給会社もあの手この手を駆使しての動員作戦、まさに見終わったばかりの「わが家の犬は世界一」、主演の葛優(グォ・ヨウ)演じる父親の心境か。 ちなみにこちらは上映開始直前に入ったら、最前列と二列目しか空きがなく、少々大き過ぎるスクリーンを見ることになってしまった。 平日昼間でも少し早めに行った方がいいかも。
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by theshophouse | 2005-05-13 21:17 | Movie
素人に訊いた方がマシな映画の感想
 新聞に載っている映画の広告を見ていると、各映画のスペースごとにその映画を先行試写で観た著名人の感想が載っています。 もちろん配給する会社が人選してギャラを積んでコメントを頼むわけで、そこにネガティヴな感想などはありえないのですが、中にはネガティヴとまではいかなくても、ギャラ積んでまで書いてもらうようなコメントでもないなあ、というのもあります。 最近の夕刊紙面で良い例と悪い例があったのでちょっとご紹介してみようと思います。

b0045944_23412366.jpg映画 : 「レイ」
概要 : レイ・チャールズの生涯を描いた伝記的映画
コメンテーター : 渡辺謙
寸評 : ハリウッド俳優の風格からか、コメントにも重厚感が漂う。
コメントが単なる感想ではなく、いかに自分がこの映画にひきこまれたかをさりげなく表現。
ジェイミー・フォックス演じるレイ・チャールズをスクリーンで観てみたい。
b0045944_23415566.jpg映画 : 「アナコンダ2」
概要 : 大蛇パニックもの
コメンテーター : 畑正憲+小向美奈子+天山広吉
寸評 : 数で勝負だが、3人合わせても渡辺謙のネームバリューには敵わない。
動物作家は幼稚園児並みの感想、アイドルは自分の嗜好の表明、プロレスラーに至っては自分の得意技の披瀝と、三者三様のバカっぷり。 っていうか、これを活字にした担当者、やる気あるのか?
配給元はこの映画、既に捨ててると思われる。

 配給会社様、予算はあるでしょうが、コメンテーターの人選は慎重に。
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by theshophouse | 2005-03-12 23:46 | Movie
プロデューサーズ
レイトショーでメル・ブルックスの『プロデューサーズ』を観に行った。 僕はコメディー映画が大好きで、モンティ・パイソンからアメリカのナンセンス・コメディまで幅広い作品のファンである。 それらほとんどが60年代から70年代の作品である。 ことコメディー映画にあっては昔のものの方が断然好きだ。 最近ではオースティン・パワーズの1作目は笑わせてもらったが、2作目には退屈させられた。 何でも2作目というものは難しいものである。
 そんな僕ではあるが、実はメル・ブルックスの作品を見るのはこれが初めてだった。 今回この作品を配給しているザジ・フィルムズはかつて「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」の版権を購入し、NHK衛星放送の深夜枠での放送を実現させた実績があり、こと笑いのツボに関して僕と同社の嗜好は完全な一致をみていた。 そして、『プロデューサーズ』はこれまで僕がコメディー映画史上の最高傑作と考えていた「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」に匹敵する作品であった。
 この『プロデューサーズ』は1968年の作品で、なんと翌年のアカデミー賞の最優秀脚本賞!に輝いている。 まさにコメディー映画界の記念碑的作品なのであるが、にも関わらず日本では公開されていなかった。 従って今回が日本初上映ということになる。 とにかく次々に出て来る役者の誰もが本当におバカばっかりで、よくぞこれだけのおバカが一堂に会したものだと感心させられてしまう。 僕は次々登場するおバカな人達に、不覚にも笑いをこらえることができなかった。 しかしもちろんただのおバカ映画ではなく、背後にはメル・ブルックスが仕組んだ用意周到な脚本がある。 ここでそのあらすじを御紹介しよう。
 かつてはブロードウェイにその名を轟かせた演劇プロデューサーのマックス・ビアトリクス(ビアリー)も、今は金に困り、有閑マダム相手にセコい商売をする身だが、ヘンな会計士レオ・ブルームと知り合い合法的なボロ儲けの方法を考えつく。 それは、金を集められるだけ集めて公演し、それを失敗させるというもの(公演が成功すると投資者に金を返さねばならない)。 彼らは、最悪の脚本を、最悪の演出家が、最悪の俳優を使って舞台化すれば、間違いなくコケるとほくそ笑んだ。 間もなくふたりは、「ヒトラーの春」という最悪の脚本を発見する。 この大駄作を書いたフランツ・リーブキンというナチス信奉者はブロードウェイ公演の話に大感激。 また史上最悪と言われている演出家のロジャー・デブリー(女装癖あり)もレオを気に入り演出を快諾。 ヒトラー役には”LSD”ことロレンゾ・セント・デュボアという、イカれた役者が見つかった。 バアさんたちから金を集めに集めた彼らは、絶対の自信を持って初日を迎えるが、予想に反して「ヒトラーの春」はなんと大成功・・・。(上映用リーフレットより抜粋)
 東京・渋谷のマークシティー脇の坂を登りきった所にあるシブヤ・シネマ・ソサエティーにて絶賛上映中である。 上映は2月の第3週ぐらいまで。 コメディー好きなら絶対に観ておかないと後悔するであろう珠玉の「元祖おバカ映画」である。
 後日談であるが、この『プロデューサーズ』は現在ブロードウェイでミュージカルとして上演され爆発的なヒットを記録、2001年を迎えた現在もロングラン公演を続けている。 プロデューサーはもちろんメル・ブルックスである。(2001/2/4出稿を再録)
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by theshophouse | 2004-10-17 13:02 | Movie



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