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トータス松本とバラク・オバマにみる戦略としての同音反復
 昨年、ZARDの坂井泉水さんが不幸にも若くして亡くなられた時、ファンの方々から一様に聞かれた言葉で、「私(僕)はかつてあの曲に勇気づけられた、励まされた。」というのがあった。 
 こういう経験ってふつう誰にでもあるものなのだろうか?
 僕にはそういう経験がまったくない。 たぶん人よりドライな人生を送っているのだろう。 心が乾いているのだろう。 そう思い至ったところで妻にも聞いてみた。

 「あのさー、ちょっと聞きたいんだけど、誰かの曲に励まされたことってある?」
 「ない。」

 即答だった。 似たもの夫婦ここにあり、である。
 もちろん音楽そのものが嫌いなわけじゃない。 思わず口ずさむような曲もあれば、映画のワンシーンが脳裏に浮かぶ大好きな曲もある。 音楽が気分を高揚させてくれることもある。 でもそれによって励まされることなどなかったのである。
 「音楽に励まされた」人たちはどのように励まされたのかというと、多くの場合はその歌詞に込められたメッセージとメロディによって励まされているようである。 つまりはその曲に感情移入できることが必須条件となるわけだが、僕の場合、日本語の歌詞に込められたメッセージはむしろ感情移入を妨げる。
 いわゆる「応援ソング」の歌詞にはストーリーがあるので、或る特定のシチュエーションが設定され、そこで何らかの苦境に陥っている主人公がいて、その主人公を叱咤激励するという三段構成になっているものが多いのだが、個人的にはそんな舞台装置に立たされるのが「面倒臭い」と思ってしまうのである。

 そんな僕だが、例外的に励まされる曲がある。


 むしろ歌詞なんぞに何らのややこしい状況設定など何もなく、ただただ「ガッツだぜ!」の一語を反復され続けるこの曲の方が僕にとっては心を動かされる。 たぶんそれには心理学的な裏付けがあって、伝える側が一番伝えたいメッセージをただ単純に繰り返すことで、伝えられる側の意識下におそらくは「刷り込み」に近い効果をもたらすものなのだろう。
 こういう単純な反復による刷り込みは意識下に作用するから厄介だ。 なにしろ常日頃「曲に励まされることなんてない」などと大見栄切ってる人間でも易々とその罠に嵌ってしまうのである。 伝える側にはその効果について熟知し、用法を誤らないことが求められる。
 傍から見れば「CHANGE !」とか「YES, WE CAN !」とかをただ連呼してた印象しかないバラク・オバマも然り。 彼の支持が黒人はもちろんのこと、アジア系やヒスパニックにまで幅広く及んだことは、よく言われる彼の演説の上手さもさることながら、その主張の単純さと反復性が、良く言えば人々にメッセージを強烈に刷りこみ、悪く言えば集団催眠にかけるような効果をもたらしたからだと思う。
 もっとも、もし自分がアメリカ人だったとしても、ベトナムのヒーローとはいえ脳細胞の硬直化が懸念され、どこかコメディ映画の主人公然とした御年72歳のロートルと、ハーバードのロースクール出の才気溢れる47歳のどちらを選ぶかと問われれば、それは自明のことだったかも知れない。
 洋の東西を問わず、民主党と名のつく政党にロクなものはないが、新たなアメリカのリーダーが現在の金融危機をはじめ、落日ぎみの超大国に山積する諸問題にどう立ち向かっていくか、生暖かく見守っていきたいと思う。



 「サムライソウル」はいい。
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by theshophouse | 2008-11-05 23:33 | Critique | Comments(2)
Commented by nasikanasika at 2008-11-06 23:03
こんばんは。
僕も音楽に励まされ~ってのはないんですが、globeの皆さんの凋落っぷりにはなんとなく励まされてしまうしょうもない人間です。

僕らの目下の敵は「おばまガールズ」なのではwww
Commented by theshophouse at 2008-11-06 23:37
>nasikanasikaさん 小室さんの人生って、バブルの頃ロックフェラーセンター買い取ったのに今やサブプライムローン焦げつかせて家を立ち退かされた人みたいですね。 振幅が大きすぐるwww

それでも平坦なだけの人生よりはマシなのかも知れませんが・・・。
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