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ゾーンプレス?
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 台風5号が日本列島に接近するなか、日産スタジアムの上空は厚い雲に覆われていた。 それはまるで停滞している岡田ジャパンの現状ともダブって見える。 果たして分厚い雲を突き抜けるブレイクスルーがあるのか。 それとも岡田監督最後の試合になってしまうのか。
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 3バックのオマーンに対し、日本が採用したのはパラグアイ戦でも採用した4-2-3-1。 ただし今度はワントップの玉田のシャドーの位置に大久保が入り、松井が左、俊輔が右の両サイドアタッカーという、パラグアイ戦の「山瀬、遠藤、俊輔」という並びとは違った配置である。 玉田と大久保の前後の関係と松井と俊輔の左右の関係は流動的で、頻繁にポジションチェンジが行われた。
 前半10分、もはや日本のどのFWよりも得点力がある中澤が遠藤のCKに飛び込んで先制。 相手CKの際、マンマークで守っていたオマーンは、他の選手の中澤が飛び込むスペースを空ける動きにまんまと引っ掛かり、ゴール前をガラ空きにした。
 前半22分の2点目は、パラグアイ戦後のエントリーで攻めのヴァリエーションの少なさを指摘した際に提案させていただいた「ロングボールを蹴って競ったところに走り込む」古典的なやり方だったが、相手DFの裏に正確なロングボールを入れた俊輔、なにげにオーバーラップしていた釣男の落とし、落ち着いてゴール左隅に蹴り込んだ大久保ともに素晴らしかった。 前半開始早々にも釣男が入れたロングボールを大久保が競って、こぼれたボールをタマちゃんがボレーシュートしたシーンがあったが、単純でもこうした攻め方を混ぜられると相手のDFは対処するのが難しくなるものである。
 二列目の両翼が常に高い位置取りをし、3トップ気味になった場合、オマーンの3バックはそれぞれ1対1の局面に陥る。 それを避けるため、次第に中盤の両サイドが最終ラインに吸収されて、5バック状態になる。 事実後半のオマーンは、点を取り返そうというよりはむしろこれ以上余計な失点を防ごうと考えたのか、最終ラインはしばしば「フラット5」状態になっていた。
 後半4分の日本の3点目はオマーンの最終ラインと中盤の間に生まれたスペースに松井が切り込み、大久保がそれを広げたところに松井から俊輔にパスが繋がり、俊輔の右足でのゴールが生まれた。 僕がスタンド観戦した代表の試合で3点入ったのは初めてだ。
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 それでもやはり岡田ジャパンは守備的なチームだと思う。 この試合を制することができた一番の原因は、組織的な守備に尽きる。 相手ボールになった瞬間に複数の選手が相手ボールホルダーに対しアプローチを開始し、相手が前にボールを出す前に包囲して奪取する。 ボールを奪ったその位置を起点に、そこからいち早く縦にクサビを入れ、両サイドに展開し、サイドから攻める。 これを繰り返すことでオマーンはまったく前に人数をかけられなくなる悪循環に陥った。 オマーンのシュート数は前半2本後半1本の計3本のみ。 枠内に飛んだシュートは0だった。 岡田監督が徹底させた「攻撃的守備」が結実した試合だったと言える。 今日の試合においては選手間に戦術的な意思統一が図られていた。
 ただ、こうしたやり方は選手にはかなりの負担になる。 高温多湿のマスカットやバンコクで同じやり方を継続するのにはリスクが伴う。 移動の疲れも出てくるはずだ。 アウェイで同じやり方ができるとは思わないが、ベースの部分は変えることなく継続すべきだろう。 攻めに関しては、オシムが志向した「ボールも人も動くサッカー」は影を潜め、集団というよりはやや個の力頼みになった感は否めないが、W杯予選を勝ち抜くという目標から逆算したプラグマティックなものに変わった捉えるべきなのかも知れない。
 ただ、かつて日本は加茂監督の時代に「ゾーンプレス」と称して似たようなサッカーを実践しようとしたことがある。 この時はしばしば相手に日本のプレッシング・ゾーンである中盤を省略され、ロングボール放り込まれて最終ラインがずるずると後退し、結果プレスがかからない事態に陥った。 アウェイのオマーンやタイが同様の戦術を仕掛けてくることは十分予想される。 かつてゾーンプレスの崩壊とともに代表監督に就任した岡田監督は、当然そうしたケースにおける処方箋を用意しているはずで、アウェイ2連戦ではそれがどんなものなのかお手並み拝見である。
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 今夜岡田監督が選んだスタメンと採用したフォーメーションについてはほとんど異論がない。 ただそれでも両サイドの出来には不満が残る。 左の長友は終始高い位置をキープしており、オマーンもかなり警戒していたが、松井との連係がなかなか合わず、いい形でボールを持つことができなかった。 それでも相手が5バック気味になってスペースがなくなった後半は松井との連係も良くなり、逆に松井が深い位置からクロスを入れるなど、この二人のコンビネーションが更に良くなれば日本の大きな武器になる。
 一方、右の駒野だが、前半21分にサイドを深くえぐっていいクロスを1本入れた以外は、相変わらず冴えない出来だった。 フリーでボールを持っても5バックが身構えているエリア内に漫然とアーリークロスを放り込むようでは厳しい。 フィジカルは強くても、技術と戦術眼が欠落している。 これではかつての加地さんと同じだ。
 長谷部の出来もイマイチだった。 彼の良さを出すにはもう少し前めでプレーした方がいいのは間違いないが、自分より前のポジションの顔ぶれに少し遠慮もあったのだろう。 次戦も同じ相手なので、目先を変える意味でも中村憲剛の起用を希望する。 もう少しミドルシュートが打てる選手が欲しいからでもある。
 その他の選手についてはみな出来が良かったが、やはり中村俊輔だろう。 リアルで見るのは俊輔とピクシーがいた頃の鞠VS鯱戦以来なので相当昔だが、さすがの存在感だった。 10番背負ってるだけあってゴールへの意識も高く、ディフェンスも一生懸命やる。 自ら「意図的に」消えてる時間帯もある。 ただ彼がピッチの中央でプレーしている時間は少なく、そのほとんどの時間帯をいずれかのサイドで過ごしていた。 ピッチの中央に君臨する10番という姿にはもはやノスタルジーの香りが漂う。 現代サッカーにおいて、もはや真ん中でのプレーに自由なスペースと時間は与えられないのだ。

 代表不人気のおかげで久々にA代表の試合を見られたわけだが、俊輔はじめ松井、中澤、釣男、遠藤ら、今の代表にはカネ払って見る価値のある選手がたくさんいることを改めて認識させられた次第である。 願わくばこのままチケットが取りやすい状況が続いて欲しいものだ。

 この試合の直前、日本サッカー協会最高顧問の長沼健氏が急逝した。 同氏の功績に深く敬意を表するとともに、その死に哀悼を捧げる。
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by theshophouse | 2008-06-03 23:42 | 蹴球狂の詩 | Comments(4)
Commented by kamokamo at 2008-06-05 20:47 x
雨の中応援ごくろうさまでした。
おっしゃるとうり、ひさびさに見ていてスカッとする試合
でしたね。生俊介は感動しそうですね。
タカノビッチさんのかねてからのご提案阿部右サイド
ケンゴどうですかね?
私、ケンゴの中学の先輩なんですが。
Commented by ジャッキー at 2008-06-05 22:37 x
やっぱりタカノビッチさんも、ユニフォーム着て応援するんですか?
Commented by theshophouse at 2008-06-06 01:29
>kamokamoさん 前から15列目でしたので屋根の下に入りきらず、後半途中からはズブ濡れでした…。 もっともポンチョは着ておりましたが。
胸のすくような試合ではありましたが、少なくとも「世界を驚かすようなサッカー」はピッチの何処を探しても無かったです…。
俊輔(いつもは茸とか書いてますがw)のプレーで一番良かったのは相手に当たってCKになってしまったミドル。 あの位置からコース見えてんだなぁと感心しました。
駒野だったら阿部の方が全然マシだと思います。 長谷部はイエロー一枚貰いましたし、次戦は憲剛使って欲しいですね。 ただ岡ちゃんアウェイでは今野使いそうな悪寒…。 イマイチ好きじゃないです今野。 啓太の方がまだ良い。 稲本は呼ばれないみたいですし。
ちなみに長友選手は僕の後輩です。
Commented by theshophouse at 2008-06-06 01:37
>ジャッキーさん 着てますよ(笑)。
今回仕事場からチャリ+電車で行ったので小机からだったのですが、駅からスタジアムまでの空き地にパチくさいユニフォームの露店の多いこと! 欧州クラブで1,000円、代表現行モデルで2,000円からありました。
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