前半10分、もはや日本のどのFWよりも得点力がある中澤が遠藤のCKに飛び込んで先制。 相手CKの際、マンマークで守っていたオマーンは、他の選手の中澤が飛び込むスペースを空ける動きにまんまと引っ掛かり、ゴール前をガラ空きにした。 前半22分の2点目は、パラグアイ戦後のエントリーで攻めのヴァリエーションの少なさを指摘した際に提案させていただいた「ロングボールを蹴って競ったところに走り込む」古典的なやり方だったが、相手DFの裏に正確なロングボールを入れた俊輔、なにげにオーバーラップしていた釣男の落とし、落ち着いてゴール左隅に蹴り込んだ大久保ともに素晴らしかった。 前半開始早々にも釣男が入れたロングボールを大久保が競って、こぼれたボールをタマちゃんがボレーシュートしたシーンがあったが、単純でもこうした攻め方を混ぜられると相手のDFは対処するのが難しくなるものである。 二列目の両翼が常に高い位置取りをし、3トップ気味になった場合、オマーンの3バックはそれぞれ1対1の局面に陥る。 それを避けるため、次第に中盤の両サイドが最終ラインに吸収されて、5バック状態になる。 事実後半のオマーンは、点を取り返そうというよりはむしろこれ以上余計な失点を防ごうと考えたのか、最終ラインはしばしば「フラット5」状態になっていた。 後半4分の日本の3点目はオマーンの最終ラインと中盤の間に生まれたスペースに松井が切り込み、大久保がそれを広げたところに松井から俊輔にパスが繋がり、俊輔の右足でのゴールが生まれた。 僕がスタンド観戦した代表の試合で3点入ったのは初めてだ。 ただ、こうしたやり方は選手にはかなりの負担になる。 高温多湿のマスカットやバンコクで同じやり方を継続するのにはリスクが伴う。 移動の疲れも出てくるはずだ。 アウェイで同じやり方ができるとは思わないが、ベースの部分は変えることなく継続すべきだろう。 攻めに関しては、オシムが志向した「ボールも人も動くサッカー」は影を潜め、集団というよりはやや個の力頼みになった感は否めないが、W杯予選を勝ち抜くという目標から逆算したプラグマティックなものに変わった捉えるべきなのかも知れない。 ただ、かつて日本は加茂監督の時代に「ゾーンプレス」と称して似たようなサッカーを実践しようとしたことがある。 この時はしばしば相手に日本のプレッシング・ゾーンである中盤を省略され、ロングボール放り込まれて最終ラインがずるずると後退し、結果プレスがかからない事態に陥った。 アウェイのオマーンやタイが同様の戦術を仕掛けてくることは十分予想される。 かつてゾーンプレスの崩壊とともに代表監督に就任した岡田監督は、当然そうしたケースにおける処方箋を用意しているはずで、アウェイ2連戦ではそれがどんなものなのかお手並み拝見である。 一方、右の駒野だが、前半21分にサイドを深くえぐっていいクロスを1本入れた以外は、相変わらず冴えない出来だった。 フリーでボールを持っても5バックが身構えているエリア内に漫然とアーリークロスを放り込むようでは厳しい。 フィジカルは強くても、技術と戦術眼が欠落している。 これではかつての加地さんと同じだ。 長谷部の出来もイマイチだった。 彼の良さを出すにはもう少し前めでプレーした方がいいのは間違いないが、自分より前のポジションの顔ぶれに少し遠慮もあったのだろう。 次戦も同じ相手なので、目先を変える意味でも中村憲剛の起用を希望する。 もう少しミドルシュートが打てる選手が欲しいからでもある。 その他の選手についてはみな出来が良かったが、やはり中村俊輔だろう。 リアルで見るのは俊輔とピクシーがいた頃の鞠VS鯱戦以来なので相当昔だが、さすがの存在感だった。 10番背負ってるだけあってゴールへの意識も高く、ディフェンスも一生懸命やる。 自ら「意図的に」消えてる時間帯もある。 ただ彼がピッチの中央でプレーしている時間は少なく、そのほとんどの時間帯をいずれかのサイドで過ごしていた。 ピッチの中央に君臨する10番という姿にはもはやノスタルジーの香りが漂う。 現代サッカーにおいて、もはや真ん中でのプレーに自由なスペースと時間は与えられないのだ。 代表不人気のおかげで久々にA代表の試合を見られたわけだが、俊輔はじめ松井、中澤、釣男、遠藤ら、今の代表にはカネ払って見る価値のある選手がたくさんいることを改めて認識させられた次第である。 願わくばこのままチケットが取りやすい状況が続いて欲しいものだ。 この試合の直前、日本サッカー協会最高顧問の長沼健氏が急逝した。 同氏の功績に深く敬意を表するとともに、その死に哀悼を捧げる。
by theshophouse
| 2008-06-03 23:42
| 蹴球狂の詩
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