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バイアス
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 回線状況は不安定ながら、ここにきてようやくラングーンとのインターネットも繋がるようになってきた。
 ビルマの取引先のスタッフのなかには今回のサイクロンで大きな被害がでた南部のデルタ地帯に居を構える人もいて、その被害に遭った家屋の写真がメールで送られてきた。
 ご覧のように元々簡素な造りの住居であり、未曾有のサイクロンに14時間にも渡って蹂躙されたのではひとたまりもない。 海岸や河川に近い地域では高波で家どころか村ごと持っていかれた所も多いので、壊れながらも辛うじて住居の原型をとどめているのはむしろ被害が軽微だったと言えるのかも知れない。

 サイクロンがラングーンを襲ってからちょうど10日後に中国四川省が大地震に見舞われた。 いずれも最近僧侶が迫害を受ける事件があった地である。 ラングーンでは昨年9月の反政府デモの際に多くの僧侶が投獄されて殺害され、四川省と隣接するチベットでも同様に僧侶が迫害を受けている。 この符合を単なる偶然と片付けることはできそうにない。
 ただ、この両国の災害後の対応はまったく違った。
 ビルマが援助物資のみを受け入れ、他国からの人的援助を拒み続けている一方、当初同じような対応をとると見られていた中国はいち早く物と人の援助を受け入れた。 もっとも救助隊が現地入りしたのは事実上救助が不可能に近い状態になってからのことであり、救助に向かった現場はいずれも生存者がいない場所だった。 救助隊と入れ替わるように現地入りした医療チームが連れて行かれたのは被災地の避難所などではなく、既に一定のレベルの医療行為が行われている近代的な病院だった。
 報道を見ていると、中国側は日本からの救助隊や医療チームの安全確保を優先するあまり、災害の最前線への派遣に二の足を踏んでいるといったような見方が多いが、実際はどうなのだろうか。
 中国という国は良くも悪くも唯我独尊でやってきた国である。 他人を助けることも、また他人に助けられるということにも慣れていないのだ。 したがって世界中から救いの手を差し伸べられている今の状況というのもまた彼らにとって未曾有の体験なのであり、どうしていいかわからないというのが正直なところなのではないだろうか。
 そうした「牧歌的な」見方の一方で、被災地域にある核関連施設や原子力発電所も被害を受け、既に放射性物質が飛散しているような地域に外国人を送り込んで、後になって被爆した事実が明らかになったりするのを恐れているといった恐ろしい仮説も成り立つ。
 それでも中国の震災後の対応で唯一評価できるのは、多くの外国メディアを受け入れ、検閲なしに自由に報道させている点である。 その「おかげ」で日本にいる我々は、現地から伝えられる映像とリポートによってその惨状の輪郭をある程度把握することができる。 ところがビルマはそうした対応はおろか、救助隊すら受け入れなかった。
 現地に情報ソースを持たない日本のメディア。 最近ではいくつかの日本のNGOが現地で独自に支援活動を開始しているので、そこからの情報もあるが、その報道は概ねAFP(フランス通信)=時事という流れに依存している。 そして当然のことながらその情報には国是である「自由と博愛と平等」というフランス的バイアスがかかっている。 先頃ようやく現地入りした日本のメディアは共同通信。 「よりによって」共同通信である。 共同通信といえば、日本で唯一平壌に支局を置くことを許されたメディアである。 つまりは将軍様にお墨付きをいただいたメディアである。 後は言うまい。
 よく「公平中立な報道」などというが、そんなものが絵空事であることは言うまでもない。 情報とは終局的には一人の個人によって発信されるものであり、そこには当然その個人の心情や視点、価値観といったものが色濃く反映される。 人の「情」が入るからこその「情報」である。 つまるところ、バイアスのかかっていない情報には何の価値もない。
 そうしたバイアスがかかったソースが発信するビルマの現状は、「軍が援助物資を横流し」「軍が瓦礫やゴミを撤去せず路上に放置」といったものである。 やはりここにも「軍政=悪、民主化勢力=正義」といったバイアスが露見する。 受け取る側の我々としてはあくまでそれを承知の上で情報に接する必要がある。 それは真実であり、また真実ではない。
 一方で「現地で支援活動を始めているNGOらが被災地に入る際に賄賂を払わされた」といった報道はかなり正確だろうと思う。 この国で何か事を始めようというとき袖の下は欠かせない。 軍政とその威を借る官僚組織は全方位的に腐敗し、この国の政治システムを未だに封建的な秩序のなかにとどめている。 それでもまだ選挙を実施している分だけ中国よりはマシということになるのかも知れない。

 以前のエントリーでも紹介したラングーンの日本語学校の方のブログ。 この方は自分で支援物資を被災地に届けるなど、支援活動も行っている。 同氏が、被災地であるラングーンから日本人の視点で海外の報道について書いているエントリーは非常に興味深い。 そして多くの場合、こうした意見はメディアから黙殺される。 コメント欄には同氏を批判する書き込みが多く見受けられるが、ビルマという国についての理解に乏しい人か、亡命ビルマ人によるものと推察する。

 海外の報道姿勢について【ミャンマー・日本語学校ブログ】

 また最新のエントリーでは被災地の現状について詳細な記述もあった。

 被災地の現状【ミャンマー・日本語学校ブログ】

 以前にも書いたが、僕とてミャンマー軍政を擁護するつもりはない。 彼らは今回のサイクロン禍の2年前に首都をラングーンから内陸部のネピドーに遷都しており、軍政の中心は既にラングーンにはない。 その遷都はとある占星術師のお告げによって行われたという説もあり、彼らはそれによって今回の被災地となるのを逃れたことにほくそえんでいるとすら思っている。
 ただ、外交的にはほぼ鎖国状態に近いこの国が、いくら大災害とはいえ突如として千客万来に転じ、各国の救助隊らを受け入れることは現実的に難しいと思う。 先頃ようやくASEANの医療チームを受け入れる決定を下したようだが、これだけでも大英断といっていいぐらいだ。
 そんな国を「世界から孤立している」というのは容易い。 今年の総統選挙の頃だったと思うが、J-WAVEの「JAM The World」という番組でナビゲーターの某氏が「世界から孤立している台湾ですが…」と、さも世間の常識のように言っていたが、こういう輩はしばしば自国に対しても同様に「世界から孤立する日本」という言説を展開する。 まさかJ-WAVEの大株主に中日新聞や共同通信が名を連ねるからというわけではあるまいが、「JAM The World」で語られる国際情勢にはしばしば左巻きのバイアスがかかるので、すんなりと聞き流すことができない。
 「世界から孤立している」というような枕詞が本当に相応しいのは北朝鮮ぐらいのものであって、本来そう易々と口にできるような言葉ではないはずだ。 そしてまた、ビルマという国を北朝鮮のような国にしないためにも、今こそ国際的な支援が必要だと思う。
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by theshophouse | 2008-05-23 01:34 | Critique
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