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まさに魂と魂のぶつかり合い(笑)だった11・21国立
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 午後6時半。 いつもより少し早めにバックスタンドに陣取る。 試合開始時刻が近づくにつれ、両ゴール裏はともかく、まばらだったメインスタンドとバックスタンドの空席もなくなった。 おそらくは大使館関係者が大半であろう数十人だけが占拠していたサウジアラビアのサポーター向けに確保していた一角も、一部を除き、試合開始と同時に当日券をゲットした日本サポに開放された。
 角澤松木の糞実況糞解説はもう金輪際ご免である。 彼らの口ぶりだと、あたかも絶対に負けられない戦いがそこらじゅうにあるかのようだが、それはまさにこの試合のことである。 しかし試合は観たい。 地上波しか観れない環境下にある僕に残された唯一の選択肢。 それはスタジアムに足を運ぶことだった。
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 「谷間の世代」と言われた。 スター不在、ゴールゲッター不在に加え、反町監督の手腕そのものに疑問符すらついていた今のU-22世代。 これまではホームゲームにも関わらず、観客動員数は振るわなかった。 しかしこの日は様子が違う。 次第に青で埋め尽くされていくスタンドを見ながら、「みんな意外にこの連中のこと気にかけていたんだな」と思った。
 アウェイのカタール戦でのロスタイムの失点による「ドーハの悲劇」によってグループ首位の座から転落した日本代表。 続くベトナムに圧勝してどうにか首位に返り咲いたが、五輪切符はホームでのサウジ戦に持ち越された。 個人技と身体能力では日本を上回る難敵である。
 そこにきて、フル代表の監督であり日本の各カテゴリーの総監督的な立場であるイビツァ・オシムが脳梗塞で倒れるという非常事態。 日本代表の北京そして南アフリカへの道は、病床のオシムの視界さながらに、もやがかかったような、漠たる不安のなかにあった。 この日国立に多くのサポーターの足を向かわせたのは、苦しんでいる若い世代を自分の力で少しでも後押しすることで、今の日本サッカー界を覆う閉塞感を払拭したいという思いだったのかも知れない。 まさに「皇国の興廃この一戦にあり」。 入場門で配られた青いフラッグがZ旗に見えたのは僕だけではなかったはずだ。
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 試合開始。 日本は3-5-2の布陣。 サウジのツートップに対してDF3枚で対応する、守備に軸足を置いたスタメン。 反町監督が意図したのは勝つことよりもむしろ負けないサッカーだった。
 前半30分ぐらいまではやや意識過剰になり過ぎたのか、中盤で簡単にボールを失ってサウジに3バックの裏のスペースを突かれ、何度も決定的な場面を与えてしまう。 守備に軸足を置く意識が逆に受身の姿勢を生んでしまった。 だが、この苦しい時間帯を乗り切ったことで、チームは落ち着いた。 ゲームは次第に日本のペースになっていく。
 後半は日本が完全にゲームを支配した。 個の力では分が悪い日本だが、相手がボールを持つと、マーカーがまず相手の進路に入り、すぐに二人、三人で相手にプレスをかけてボールを奪取して攻撃に繋げた。 なかでも、常にボールをチェイスし続けた柏木の運動量とスペースを消すポジショニングは圧巻だった。
 ボールを持ったサウジの選手は、常に彼方からボールめがけて突進してくる柏木をいなすことを意識し、常に彼の影に怯え、前線への効果的な配球ができなかった。 柏木はフル代表でいうところの鈴木啓太のような汗かき役をこなしつつ、中村俊輔のようなラストパスも出し、そしてなおかつ自分で裏のスペースにさえ飛び出していた。 確かにまだまだプレーに荒削りな部分があるのは否めないが、一人でこれだけの役割をこなすことができるプレイヤーは他にいない。
 元を辿れば梶山の負傷離脱で出番が回ってきた柏木陽介。 このチームに彼がいなかったらと思うとゾッとする。 もちろんその非凡さはテレビの画面を通してでも十分伝わるものだが、今回あらためて彼を実際に見てその存在感に圧倒された。 銀髪をなびかせ、ピッチを縦横無尽に駆け巡る姿は、ひたすらにボールを追いかけるサッカー小僧そのものだった。
 試合開始前のアップの時、いちばんサポーターからの声援を受けているのも柏木である。 あちこちから「ヨウスケー!」という黄色い歓声がかかったと思いきや「カシワギーッ、頼んだぞー!」と野太い声も飛ぶ。 既にみんなは彼に何か特別なものを感じ始めているようだ。
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 歓喜の瞬間、最後はスリートップにしてハイクロスを放り込み、勝利への執念を見せたサウジの選手たちはピッチに倒れこんだ。 試合結果は引き分けだったにも関わらず生まれた勝者と敗者のコントラスト。 サウジの選手たちにとって不運だったのはこの夜の東京の寒さだったかも知れない。 ゴール裏はともかく、メインスタンドとバックスタンドは凍えるような寒さだった。 サウジの選手たちにも心からねぎらいの言葉を贈りたいと思う。
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 一緒にスタンド観戦した友人と渋谷に出てささやかな祝宴となった。 店には今日のサッカーの結果などどうでもいいといった風情のリーマンやOLが与太話に花を咲かせている。 僕らはイラク派遣から平和ボケの母国へ無事帰還した自衛隊員よろしく杯を掲げた。 代表のガチ試合は観るのも疲れる。 それはやはり共に戦った証なのかも知れない。 アルコールが寒さで収縮した血管を拡張させ、その思考能力を奪うのにさほどの時間はかからなかった。
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by theshophouse | 2007-11-23 01:47 | 蹴球狂の詩
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