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戦うということ【アジアカップ2007総括】
 アジアカップ2007はイラクがサウジアラビアを1対0で降し、初優勝を飾った。
 僕はイラクがオーストラリアに3対1で勝った試合をバンコク滞在中にテレビで見ていたのだが、そのあまりのインパクトに決勝までやってくるのはイラクだと考えていた。 そしてもちろんその相手は我らが日本代表になるはずだと。
戦うということ【アジアカップ2007総括】_b0045944_144111.jpg ホテルのテレビではドバイのスポーツ専門局が連日アジアカップ特番を組み、試合終了時から深夜までの約4時間に渡って熱い討論を繰り返していた。 主にその日行われた中東諸国の試合を振り返り、アラブの正装に身を包んだ男たちが侃々諤々の大討論を繰り広げるのである。 時には視聴者からの熱い生電話まで紹介するほどの入れ込みよう。 僕の知る限り、ここまで度を越した盛り上がりが日本国内にあったとは思えないし、主催国のタイですらここまでのものは感じられなかった。
 イラクがオーストラリアに勝った夜、スタジアムの外でインタビューを受けたイラクのサポーターは、最初こそ喜びを爆発させていたが、突然号泣してカメラに背を向け、インタビュアーに肩を抱かれながらオイオイ泣き続けた。 もちろん言葉はわからないが、彼が祖国の惨状に思い至り、そうした過酷な状況下でオーストラリアを降した自分たちのチームに激しく心を揺さぶられたであろうことは容易に理解できた。 もちろん日本のサポーターも代表を愛する気持ちはイラクのサポーターに決して劣ることはない。 ただ、この涙は日本のサポーターには決して流すことのできない涙だった。

 ここバンコクには、内戦状態の祖国を脱出し出稼ぎに来ているイラク人もいる。 タイとオーストラリアの試合当日、サイアムのナショナルスタジアムでは同じ組のイラク対オマーンの試合があった。 スタジアムの周辺にはイラク国旗を持った男たちが早くから意気揚々と闊歩していた。
戦うということ【アジアカップ2007総括】_b0045944_1444563.jpg 試合はグループステージの最終戦ということもあり、既に勝ち点4を挙げ、引き分けでも1位通過となるイラクはゲームプラン通りに引き分け、準々決勝をこのままバンコクで戦う権利を得た。
 かたや狙い通りタイをカウンターの餌食とし、なんとか同組2位に滑り込んだオーストラリアは連日のスコール続きで思いのほか涼しかったバンコクから高温多湿、灼熱のハノイへの移動を強いられた。 後の両国の結末を見る限り、ここが今回のアジアカップにおけるひとつの分水嶺だった。
 続く準々決勝。 イラクは大幅にメンバーを落とした状態でベトナムを2対0で降し、残り2試合に向けて準備万端でクアラルンプールへ乗り込んだ。 AFCの不手際で余計な疲労を溜め込んだせいか韓国には苦戦し、PK戦までもつれたがなんとか振り切り決勝進出を決めた。
 一方のサウジアラビアは、準々決勝でオーストラリアを降した日本にゲームを支配されながらも、数少ないチャンスを確実にモノにし、ゴール前を固めて逃げ切った。

 低レベルの凡戦に終わった3位決定戦に対し、休養が一日長いのも手伝ってか、決勝はエキサイティングな試合だった。
 イラクのサッカーは今大会終盤の日本のサッカーとは対照的なものだった。 すべてがゴールという最終目標から逆算されたパス回し。 そこに高度な戦術などはまったく感じられないものの、常にゴールまでの最短距離を全員が意識し、ひたすらに前を目指すサッカー。 どこか南米の選手を彷彿とさせる個人技とイマジネーション。 飽くなき勝利への渇望が支える驚異的な運動量。 それらはいずれも今大会の日本に欠けていたものばかりだった。
 サウジもよく粘ったが、アジアの古豪復活という今大会のストーリーの中では脇役に甘んずるしかなかった。 準決勝で日本を奈落の底に突き落とした9番のマレクは不発。 結局彼が今回のアジアカップで挙げたのは日本戦での2得点のみ。 4得点で大会の得点王(他2人)をとった高原ほどのコンスタントさはない選手だっただけに、日本の運のなさが改めて悔やまれる。

 国内が未だ内戦状態のなか、堂々たる戦いぶりでアジアを制したイラク代表を称えたい。 彼らは優勝にふさわしいチームだった。 そしてそのことは2010年W杯アジア予選にまたひとつ難敵が加わったことを意味している。 戦い方にこだわるあまり、戦いそのものを放棄した今の日本代表が南アフリカに行ける保証はどこにもない。
戦うということ【アジアカップ2007総括】_b0045944_1494311.jpg

by theshophouse | 2007-07-31 01:39 | 蹴球狂の詩
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