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帰ってきたジム・トンプソン
 妻が現地で取引先の方をアテンドするためにバンコクに行ってきた。 取引先の方々はセブ島経由でバンコク入りするということで、妻は単身バンコクへ旅立った。 本来なら二人で行きたいところであったが、年末の繁忙期に加えて拙店ではセール期間中ということもあり、店を閉めるわけにもいかず、不覚にも僕がその間店番をすることになった。
 数日後、帰国した妻が僕に買って来てくれたお土産はジム・トンプソンのTシャツとポストカードだった。 最初、「タイ初心者じゃあるまいし、何で今さら」と思ったが、袋から出してみると、見慣れたジム・トンプソンのテイストとは明らかに違うTシャツとポストカードだった。
 実はジム・トンプソン、最近それまでの旧態然とした路線からややファッショナブルな路線にシフトしている。 ジム・トンプソンは1967年にマレーシアのキャメロン・ハイランドで休暇中に失踪し、会社は当時の片腕だったタイ人が引き継ぎ、数年前にその息子が代表に就任している。 つまり三代目だ。
 ジム・トンプソンの失踪は今も謎に包まれている。 そのミステリアスな失踪事件は彼を知る多くの人にさまざまな推理や憶測をもたらした。 彼がCIAの情報部員だったという説もある。 僕もかつてマレー鉄道で何度か旅をしたことがあるが、キャメロン・ハイランドそばのイポーという駅に着いた時には、思わず途中下車して彼が最後に宿泊していた山荘を訪ねてみたいという衝動に駆られたほどである。 この事件についてはウィリアム・ウォレン著「失踪」に詳しいので、興味のある方はぜひ読んでみていただきたい。 また、松本清張の「熱い絹」はこの事件を下書きに創作されたミステリー。 キャメロン・ハイランドで栽培されているお茶をキーワードに展開していく重厚なストーリーは読む者を惹きつける。 僕もマレーシアのナショナル・ブランドでもあるボウ社のお茶は大好きだ。 なかでもやはり定番は「キャメロニアン」。 マレーシアのお茶を飲みながら、ジム・トンプソン失踪のミステリーに思いを馳せるのも悪くない。
 ずいぶん話がそれてしまったが、先日妻が日本を訪れていたジム・トンプソンの三代目と会う機会があった。 数日後に取引先とバンコクを訪れることになっている旨を伝えると、「それじゃあ会社でクルーザーを出しますから、夜のチャオプラヤ・クルーズでもいかがですか?」と三代目から招待されたのである。 まったく、僕の行かない時に限ってこういうサプライズがある! 結局妻たち一行は豪華クルーザーでカナッペとアペリティフを堪能しつつ、夜のチャオプラヤ川でバンコクの夜景を満喫したのであった。
 
b0045944_1461471.jpg バンコクの中心部、サイアムのそばにジム・トンプソンの家がある。 アユタヤにあった古い家屋を解体し、船で運んで移築したものだ。 そこには彼が収集した家具調度品や仏像の数々が飾られている。 バンコクの観光名所のひとつなので、当地を訪れた方なら誰もが一度は行く場所である。
 そんなジム・トンプソンの家で、今「LOST IN THE CITY」という企画展が行われている。 サブタイトルは「Jim Thompson Returns!」である。 21世紀のバンコクに、失踪していたジム・トンプソンがひょこり戻ってきたら・・・というのがテーマ。 今のバンコクの象徴のひとつでもあるスカイトレインの車内に座る浦島太郎状態のジム・トンプソン・・・そんな楽しいコラージュの写真もあったりしてなかなか面白い。
 僕もカオサン時代からたびたび訪れているジム・トンプソンの家だが、今では昔のように勝手に中を見て回ることはできなくなり、ガイドの説明を必ず聞かなければならなくなった。 昔は屋内でまったりすることもできたのだが、今はガイドと一緒なので一気に見て回らなければならない。 魅惑的な微笑みを湛える見事なカンボジアの仏像の前で小一時間鑑賞してみるなんてことは不可能になってしまった。 そんな観光客のフラストレーションの捌け口として用意したのか、数年前には同じ敷地内にカフェとショップもできたりして、少しばかり長居ができるようになった。 Tシャツとポストカードのお土産はその企画展のものだったのである。
 会期は3月末まで。 年末年始、バンコクを訪れる方は覗いてみてはいかがだろうか。


JIM THOMPSON
Jim Thompson Thai House Museum
LOST IN THE CITY

※12月27日発売の雑誌「STORY」2月号の221ページに拙店が紹介されています。 ご興味がおありの方はご覧下さい。
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by theshophouse | 2006-12-28 01:52 | アジア人物伝 | Comments(2)
Commented by saladaengstore at 2007-01-03 19:46
theshophouseさん ご無沙汰しております。
ジム・トンプソンは現在世界中の優秀なデザイナーが来ているとのことを聞いております。バンコクには年に6,7回行っておりますが、必ず、ジム・トンプソンの家には行きます。私も松本清張の「熱い絹」を読んでからはいつか近い内にキャメロン・ハイランドなどのジム・トンプソンの足跡を辿って見たいと思っています。ジム・トンプソンの商品は、世界中のブランド品の頂点のように感じていますね。
Commented by theshophouse at 2007-01-05 14:24
>saladaengstoreさん saladaengさんはシルクを扱っていらっしゃるので、とりわけジム・トンプソンへの思い入れがおありでしょうね。
エントリーでも触れましたが、今回の企画展「帰ってきたジム・トンプソン」は、そのサブタイトルとは裏腹に、ジム・トンプソンを過去の遺産として捉え、ジム・トンプソン離れしていくブランドのありようが色濃く出たもの、という印象を受けました。
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