Top
あんでるせん その1
 先日、代官山で学生時代の友人Jと7年ぶりぐらいに会った。 彼は今、かつてはクリエイターや横文字職業人の巣窟と言われた「代官山パーフェクト・ルーム」に事務所を構えていて、「capitol hill product」というブランドの服や靴をデザイン・製造・卸売りしている。 ユナイテッド・アローズにも彼のブランドの商品が並んでいるそうだ。 どうぞごひいきに。 と、ここまではちょっとした宣伝なのですが、その彼が7年ぶりに会った僕にいきなり言うのである。
 「あんでるせんって知っとう(博多弁)?」 彼の顔色から童話やパン屋の話ではないことを察した僕は、少しの間を置いてから「知らん。」と答えた。 彼は何度も「話していい? 本当に話してもいい?」と何度も躊躇しながら小声で話し始めた。 それは驚くべき話であった。
 福岡在住の彼の母親が友人と、長崎は佐世保のとある喫茶店「あんでるせん」に行くことになった。 なんでもその喫茶店のマスターが超能力の使い手らしく、超能力ショーを見せてくれるらしい。 店は完全予約制なので、彼女は一緒に行くHさんに予約の電話を入れてもらった。 彼女とHさんを含む総勢5名のお仲間は無事に席を確保し、長崎へと向かった。
 店に入るとまず注文する。 メニューは700円のカレーと300円のコーヒーのみ。 マスターは一人ですべての客の注文をとり、一人で黙々と準備する。 店内には全部で30席ほどあり、満席である。 やがて各々の前に注文したものが運ばれ、みんな食べる。 みんなが食べ終わると会計して、片付けが始まる。 この間マスターは殆ど何も喋らない。 こうしてようやく「ショー」が始まる。 ショーは無料で見ることができる。 つまり最低300円払えば、延べ一時間半に及ぶサイキック・ショーを満喫することができるのである。 決して商売気はなさそうだ。
 マスターはあらかじめ別の客に札入れを渡し、絵を描きたい人に何人か手をあげてもらう。 ジャンケンで買ったのはJの母親であった。 マスターは彼女に紙を渡して「何でも好きな絵と自分の名前を書いて下さい。」と言う。 彼女は渡された紙にハイヒールの絵を描いてポケットにそれをしまった。 そこで先ほどの札入れを開けると、マスターが今朝7時に描いたという絵が出て来た。 そこに描かれていたのは、ハイヒールのような形をした便器と彼女の名前だった。 朝7時から彼女が来店して、ジャンケンで勝つ事がわかっていたそうだ。 ちなみに予約時にはHさんの名前しか伝えていなかった。 また、他のお客さんの名前やその人のお父さんの名前などを当てる。
 新しいスプーンをお客に渡し、手のひらでお皿の部分(スプーンのものを入れる部分)を握ってもらう。 マスターが「気」を送る。 マスターが「ちょっと(気が)強すぎたかな」という。 お客が手のひらを開くと、何と「スプーン」が「フォーク」になっている。 やはり気が強すぎたのだろう。 フォークの先の部分が焦げたようになっていて少し絡まっている。 スプーンがフォークに変わる。 こうして「変化」したスプーンはお土産に買って帰ることもできる。
 お客さんから秒針のある腕時計を借りて、テーブルの上に置く。 時計にはマスターは触れてはいない。 マスターが「今から、秒針を止めます。」と言って、気を時計に送る。 とたんに秒針が止まってしまう。 次に「何時何分か好きな時間を言ってください」と言って、お客が「2時5分」という。 また、気を送ると、長針(分針)がスーっと回りだし、指定された時間でピタリと止まる。
 電源につながっていない電球に電気をつけて、しかも宙に浮かせて思い通りに空中の電球を動かせる。 次に手のひらの100円硬貨を、カマボコ板みたいなもので、パンと叩くと3分割ほどに割ってしまう。 割ったら、粉くらいの破片が出たので、うまく戻るかなあといいながらも、最後は一瞬にしてもとに戻してしまう。 さらに一万円札を100円硬貨が通過する。 電子構造の隙間を利用するのだそうだ。
 Jの母親から、あらかじめナンバーを控えた一万円札を預かり、空中で燃やしてしまう。 そして「この一万円札はあきらめなさい。 いつか思わぬ時にあなたの手に戻りますから。」と無責任なことを言う。 彼女は自宅に帰って、いつも鍵を入れる引き出しを開けたら、先ほどの一万円札が入っていた。 彼女の友人たちも、マスターに預けてきたはずのイヤリングなどが、後日自宅のあちこちから出て来た。

 最初は「久しぶりに会ったというのにうさん臭い話をする奴だなあ。」とあきれていた僕だったが、いつの間にか身を乗り出して聞いているのであった。(1999/7/3出稿を再録)

つづく

Vote for Design+Art Blog Ranking
[PR]
by theshophouse | 2004-10-17 13:21 | Mystery
<< あんでるせん その2 ユニーク標識・看板展覧会 >>



思うところを書く。
by theshophouse
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
カテゴリ
Critique
Asian Affair
蹴球狂の詩
Odyssey
Photographs
Iiko et Tama
Non Category
Food
Mystery
Design
アジア人物伝
Alternative
Books
Movie
Sounds Good
昭和
モブログ日報
F1
号外
Profile
以前の記事
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2004年 11月
2004年 10月
2001年 10月
フォロー中のブログ
国境の南
osakanaさんのうだ...
青いセキセイインコ推定4...
THE SELECTIO...
V o i c e  o...
わしらのなんや日記
90歳、まだまだこれから...
午前4時から正午まで
藪の中のつむじ曲がり
PISERO しゅうまい...
最新のトラックバック
エス東京オフィス
from はるの日常
才色兼備な「タイのセレブ..
from Boochanの宝探し
チベットでのジェノサイド
from わしらのなんや日記
経済別に選びたい放題!チ..
from Boochanの宝探し
IKEA for ママゴト
from わしらのなんや日記
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧