極端な言い方をすれば、この世の中は2種類の人間に大別することができる。 男と女、大人と子供、そして自分と他人というように。 僕はこうした分類に、サンマルクを知る人と知らない人という項目も加えるべきだと思う。 そして僕はサンマルクを知らない人だったのである。 ついこの前まで。
2月のある晴れた日、僕は妻と駒沢界隈を散策していた。 駒沢オリンピック公園のすぐそばにはベーカリーレストラン「神戸屋」がある。 ちょうどお腹を空かせていた僕らは神戸屋で軽い食事でも取ろうと思ったのだが、「せっかく駒沢に来たのだから、チェーン店ではなくて、なんか地元の店に入ろうよ。」ということになった。 ふと見ると、すぐそばに「サンマルク」というベーカリーがあり、中に入ってみると奥がレストランになっていた。 渡りに船とはこのこと。 僕らはさっそくレストランに入った。 ゴシックを模した柱が並ぶ店内は、庭に面したガラスのサンルームから差し込む午後の光に照らされてなかなかシックな雰囲気。 はしっこに鎮座するグランドピアノもゴージャスさを醸し出している。 僕らの他には客は2~3組しかおらず、聞こえてくるのはヴォリュームを抑えたBGMとかすかな話し声のみ。 僕が心の中で「ちょっと高そうな店だなあ。」とやや後悔の念を強くしていると、ウェイトレスがメニューを持ってやって来た。 ラミネート加工されたメニューを見て初めて僕は気付いた。 ここがファミレスであることに! 気になる値段は、なんとイタリアンもしくはフレンチのフルコース(スープ or 前菜 + エントリー + メイン + デザート + コーヒー or 紅茶)が1,680円(!)から。 いったいこの安さは何なのだ! 僕は平常心を保つのに苦労しながら、メニューをチェックした。 そして選んだのは、パンプキン・スープ + ピリ辛バジルスパゲッティ + 若鶏のグリルチーズ風味 + ブランマンシェ + コーヒーという組み合わせだった。 各カテゴリーで単価の高いメニューを頼むと基本料金である1,680円をオーバーしてしまうので、ここはきっちり基本のメニューを選択。 ウェイトレスが注文を聞いて厨房に戻っていっても心のざわめきは収まらない。 妻はそれほどお腹を空かせていなかったせいか、おしゃべりコース(デザート + オープンサンド + 焼き立てホットスフレ + ハーブティー)1,080円を選択。 こちらもなかなかのコストパフォーマンスには違いない。 次々と料理が運ばれてくる。 決して一皿一皿の量が少ないわけではない。 その味は決して一級品とはいえないが、「安かろう悪かろう」とタカをくくっていた僕らを驚かせるには十分であった。 しかもさすがにベーカリーレストランらしく、食事中に焼き上がったパンがバスケットに山盛りで何度も運ばれて来る。 中には持てないぐらいアツアツのものもあった。 これら5種類以上の自家製ハースブレッドは食べ放題。 つまり1,680円の中に含まれている。 パンはとても美味しく、ヘタをするとそれだけでお腹いっぱいになってしまい非常に危険だ。 メニューを見ると、ワインもボトル1,500円からと非常にリーズナブル。 グランドピアノもただの飾りではなく、誕生日などに予約をした客のために専属のピアニストが曲をプレゼントするために設置してあるのだ。 いったいこの充実ぶりは何なのだ。 これはもう完全に価格破壊を起こしている。 出されてくる料理を見ながら頭の中で原価計算をしてみるが、これでまともな利益が出ているとは到底思えない。 もしかしたらこの店は半官半民の第三セクターか何かが運営していて、国から補助金が出ているのではないか? そんな考えが頭をもたげてきた頃、ウェイトレスが我々のテーブルに伝票を置きに来た。 恐る恐る見てみると二人あわせて消費税込2,898円。 夢ではない。 気分的には5~6,000円分の食事をした感覚だ。 サンマルクを既に御存知の方からすれば「当たり前」のことかも知れないが、僕らにとってそれは大袈裟に言うと「何かが降りてきた」ような感覚であった。 僕らはサンマルクを知ってしまった人間としてこれからサンマルクに通い続けるであろう。 あなたの街にもきっとサンマルクがあるはずだ。 まだ行ったことがないというあなたは、騙されたと思ってぜひ行ってみて欲しい。 行く前にサンマルクのホームページでメニューを決めてから行くのもいい。 嗚呼、うちのすぐ前の「とんでん」が「サンマルク」に代わってくれたらどんなにいいか!(2000/3/5出稿を再録)
by theshophouse
| 2004-10-17 12:44
| Food
|
カテゴリ
CritiqueAsian Affair 蹴球狂の詩 Odyssey Photographs Iiko et Tama Non Category Food Mystery Design アジア人物伝 Alternative Books Movie Sounds Good 昭和 モブログ日報 F1 号外 Profile FOLLOW ME ? LINK Naomy's Homes Away From Home Flip along Thailand with Kura ゴノレゴシリーズ ブロンソン原理主義 鳥肌実公式家頁 不肖宮嶋 Chico The Human Clock 武蔵野はらっぱ祭り OLD MAPS & PRINTS Google Maps Google Moon アジアのいかしたTシャツ キラートマト ベルリン 都市の横顔
サポティスタ カジオログ SOCCER UG BLOG UO.FootballAsia kenji fukuda BLOG
がらくたチップス klalaのblog FABBRICA恵比寿オーナーのひとりごと MONOPOLICE マレー半島モンスーン寄稿新世紀のビッグブラザーへ blog サンタの隠れ家
百式
管理人にメールを送る メールフォームへ 以前の記事
2010年 07月2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2001年 10月 フォロー中のブログ
国境の南osakanaさんのうだ... 青いセキセイインコ推定4... THE SELECTIO... V o i c e o... わしらのなんや日記 90歳、まだまだこれから... 午前4時から正午まで 藪の中のつむじ曲がり PISERO しゅうまい... 最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ファン申請 |
||