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ワールドカップ観戦記/England×Sweden
 6月5日、埼玉スタジアム2002に向かう埼玉高速鉄道の車内は異常な状況下に置かれていた。 車内には既にパブで一杯ひっかけてきたイングランド人サポーターがあぐらをかいて床に座っており、座席には数人が酔いつぶれて寝転がっていた。 車内にはビールの匂いが充満している。 時折すれ違う上り電車内の客は、イングランドのユニフォームを着た日本人イングランドサポーターと多くのイングランド人サポーターですし詰めとなっているこちらの車内の様子に驚愕の視線を浴びせていた。
b0045944_12224887.jpg 突然ベッカムのユニフォームを着た日本人の女の子が彼らイングランドサポーターのおもちゃにされてしまった。 彼らは彼女に用意していた「ベッカムモヒカンづら」を装着して大受けしている。 頭の弱そうな、もといノリのいいこの女の子、次々にイングランドサポーターと肩を組んでは車内での記念撮影大会とあいなった。 その後はイングランド人サポーターの独壇場であった。 次から次へと沸き起こるイングランドチームやベッカムの応援歌の大合唱、である。 誰かが歌のイントロを歌い始めると、付近にいた全てのイングランド人サポーターがこれに呼応、日本人のサポーターも加わり一瞬にして車内は大盛り上がりである。 途中の駅からこの日の対戦相手であるスウェーデンのゲームシャツを着込んだ日本人男性が車両に乗り込んで来ると、車内は彼らの大ブーイングに包まれた。 彼はイングランド人サポーターに取り囲まれ、不幸にもスウェーデンのシャツを脱がされて上半身裸にされてしまった。 と思いきや、予備に用意していたのかイングランドのシャツを強引に着せられて、一瞬のうちに同化させられてしまった。 恐るべしイングランド・サポーター。 試合は少なくともこの車内においては始まっていた。
 僕は前から持っていた一昔前のイングランドのゲームシャツを持参していた。 サッカーやフットサルの練習の時に着ていたものである。 スタジアムに着いたら着ようと思っていたのだ。 しかし電車に乗ってから驚いたのは、極めて多くの日本人が最新のイングランドのゲームシャツを既に着ており、その殆ど全ての背中には「BECKHAM」や「OWEN」の文字が躍っていたことである。 この状況を見て僕は自分までが改めてシャツなど着る必要がないことを悟った。 そしてサポーターの数では余りに劣勢となっていたスウェーデンに肩入れして試合を観る事を心に決めたのであった。 日本人は変だ。 彼らのほとんどは単に祭りに参加する意思表示としてではなく、まるで海外の高級ブランドに群がる日本人そのものででしかなかった。 こんな国民は世界中どこを探してもいないだろう。
 この試合のチケットは国内の二次販売で得たものである。 事前の抽選で登録した電話番号の末尾2桁が当選し、電話受付の2日目に電話をかける権利を得たのだった。 しかし当日電話はまったく繋がらない。 朝から継続的にかけ続けているにも関わらずまったく繋がらないのである。 あきらめかけた午後4時過ぎ、オペレーターが出た時は何かの間違いではないかと疑ったほどに絶望的な状況であった。 第一希望であった札幌のアルゼンチン対イングランドは既に昨日の段階で完売していた。 僕は躊躇なく第二希望のイングランド対スウェーデンの試合をカテゴリー2で4枚選択したのであった。 考えてみれば埼玉でのこの試合は東京に住んでいる僕にとって、札幌まで行くよりは明らかに現実的な選択であった。 ただ、アルゼンチン対イングランドであれば韓国であろうがニカラグアであろうが行くつもりであった。 僕はこのチケットを妻と弟と友人のルイジ・カモーゴとシェアした。 身内はともかくルイジはこれから一生この私に忠誠を誓わなければならないだろう。
b0045944_1223778.jpg 浦和美園の駅に着くと、駅前は既に大勢のサポーターや観客で溢れていた。 僕らはスウェーデン人女性が駅前広場で無料配布していた応援用のスウェーデン国旗を貰い、スタジアムへと向かった。 駅からスタジアムまではけっこう距離があったが、途中さまざまなイベントなどが開催されており、ワールドカップの雰囲気を盛り上げていた。 フェイスペインティングなんかも無料でやってくれるコーナーなどもあり、早く来ていればやってもらいたいところだったが、既に試合開始の時刻も迫っており、受付は締め切られた後であった。 スタジアム到着。 埼玉スタジアム2002は日本では珍しいサッカー専用のスタジアムである。 ただ、ピッチと客席との間には大きな溝があり、その距離は思いのほか遠い。 せっかくのサッカー専用なのにこれは残念としか言いようがない。 まるでマラカナン・スタジアムのようだ。 僕にとって理想のスタジアムは、かつてエリック・カントナが観客の汚い野次に怒り、その客めがけて飛び蹴りを食らわせることが可能であった典型的なイングランド・スタイルのスタジアムである。 サッカーというスポーツの成り立ちからすれば、少なくとも観客席の最前列はピッチと同じレベルにあることが望ましい。 僕は今でも日本で一番サッカーを見やすいのはかつて横浜フリューゲルスやマリノスがホームとしていた三ツ沢球技場であると信じる。 三ツ沢で見た、審判に殴られたモネールやエドゥーの信じられないようなフリーキック、当時売り出し中だった前園の切れ味鋭いドリブルは今も忘れられない思い出である。 更にはその試合でタモリ倶楽部の空耳アワーに出ているイラストレーターの安斎さんが僕のすぐ後ろの席で下品な野次を飛ばしていたのも。 事実その野次のせいで?ペレイラが致命的なミスを犯し、ヴェルディは敗れ去ったのであった。
 試合開始2時間前、スタジアムに到着したばかりの両チームの選手たちがピッチの状態を確認しに出てきた。 最初に出てきたのはスウェーデンチーム。 ベージュのスーツに薄いブルーのシャツは選手たちの北欧特有のブロンドの髪との相性も極めて良好で、うちのかみさんは「オシャレー」を連発。 うちのかみさんの興味はいつも主題とはすこしズレたところにある。 たいしてサッカー好きでもないのにワールドカップなんかに連れてこられた人間の極めて自然な反応ではある。 が、この妻が今大会の決勝はブラジル対ドイツで優勝はブラジル、得点王はロナウドと大会前に予想していたあたり、妻の、いやサッカーの深遠さを僕は後々思い知ることになるのである。 それらスウェーデンチームの中で唯一目立っていたのはソフトモヒカンで真ん中を所属チームであるアーセナル・カラーの赤で染めていたリュンベリ。 今回のスウェーデンの中で唯一僕が心魅かれるプレイヤーである。 続いてイングランド。 赤と紺と白のボーダー柄のFA(イングランド・サッカー協会)のオフィシャル・ポロシャツにショートパンツ、サンダル履きとこちらはかなりラフな感じ。 ベッカムやオーウェンはスタンドに手を振る余裕を見せた。b0045944_12232019.jpg 試合開始直前、大型モニターで両チームのスタメン発表。 スウェーデン人であるイングランドのエリクソン監督が紹介された時、僕らの前列に陣取っていたスウェーデン人サポーターが大きな拍手を送っていたのが印象的だった。 試合開始。 イングランドは出場が不安視されていたベッカムが先発出場、さっそく左コーナーキックからキャンベルのゴールをアシストし存在感を見せつけた。 だが、後半に入るとベッカムは完全に消えてしまう。 中盤をスウェーデンに支配され守勢に回ってしまった。 やがてイングランド・ディフェンスのクリアミスをアレクサンデションに叩き込まれて同点に追いつかれてしまう。 その後もスウェーデンが怒涛の攻めに出たが、GKシーマンのファインセーヴもあり、どうにか負けを逃れ勝ち点1を手にした。
 注目されていたベッカムであったが、やはりまだ怪我が完治していないのか、後半は運動量が落ちて交代させられてしまった。 ワールドカップ前、このチームの中盤を仕切るものと思われていたスティーヴン・ジェラードの怪我による離脱はチームに大きく影を落としていた。 スコールズへの負担は増し、完調ではないベッカムが中に絞ってゲームを組み立てることに時間と体力を割くようでは、得意の右サイドからのクロスの精度は望むべくもない。 僕は今大会のイングランドに早くも限界を見てしまったような気がした。(2002/7/4出稿を再録)
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by theshophouse | 2004-10-17 12:28 | 蹴球狂の詩
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