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もし日本が引っ越せるなら
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 仕事で年に何回かタイに行く。 いっぱしのタイ通を気取ってこのブログにもタイでのエピソードを書いたりしている僕だが、実際のところ特別タイに詳しいわけでもない。 タイ語もしゃべれないし、タイ人に親友と呼べる人間もいない。
 日本とタイの関係は非常に親密で、経済や文化、人的交流も盛んだ。 そんなことを改めて実感させられたのが、実は僕の仕事場でのこと。 昔からこのブログを読んで下さっている方ならご存知だと思うが、僕の仕事場は横浜は都筑区の町工場が密集するエリアにある。 そこには5つの工場が棟続きで長屋のように連なっており、その一区画が僕が仕事場として使っている倉庫兼工房である。
 景気が良くなった、とテレビや新聞は言うけれど、実際には二極化しているだけで、中小の町工場が集まるこのエリアに活気はない。 事実この棟続きの工場で最後まで頑張っていたプレス工場が最近廃業した。 新しいフォークリフトを購入したり、紆余曲折のすえ後を継ぐことを決意した息子が父親とともに働き始めたりしていた矢先の出来事だった。
 主に三菱自工の下請けで成り立っていたこのプレス工場。 ダイムラー・クライスラーの資本参加以降、リコール隠しなど度重なる不祥事のすえ赤字体質に陥った事業の立て直しを図るべく、2005年1月に就任し、新経営計画「三菱自動車再生計画」を発表した新たな経営陣が、就任の手土産にそれまで使っていた下請け工場を全部切り、小型部品の生産拠点を東北地方に移したのが青天のへきれきだった、とはプレス屋のオヤジさんの弁。
 かくして、買って間もないピカピカのフォークリフトは安値で転売され、後を継ぐはずだった気のいい長男坊はハローワークに通う破目になった。 オヤジさん本人はもう年金も支給される歳なので、「これからはのんびり暮らすことにするよ。」と笑っていたが、その言葉の端々に息子に工場を残してやれなかった無念が滲む。 今、日本のあちこちでこの親子と同じような状況が起こっている。
 こうして、僕が来た時はこのプレス屋さんに金型加工屋さん、研磨屋さん、板金屋さんがそれぞれの生業を営んでいたこの長屋も、気がつけば僕だけになってしまった。 しかし、それからあまり時を置くことなく、次々と新しい店子が入ってきて今ではもう空いている工場はなくなった。 すぐそばに陸運局がある利便性からか、民間車検場を兼ねたクルマの板金屋が一気に3軒も入居してきたのだ。 これに加えて産業機械の輸出業者と塗装工事の会社がそれぞれ倉庫としてここを使うようになった。
 ずいぶん話が脇道にそれたが、僕の両隣に店子として入居してきた板金屋と産業機械の輸出業者が、それぞれタイに深く関わっている方々なのであった。 まず板金屋だが、奥さんがタイ人なのである。 奥さんは横浜の関内でタイ人ホステスが10人くらいいるスナックを経営している。 今バンコク市内に家を建築中で、奥さんは店をスタッフに任せ、工事の現場監督をするためにずっとバンコクに帰っているのだという。 誰かが見ていないと適当な材料で勝手に建てられてしまうそうなのだ。 このあたりはいかにもマイペンライ・テイストである。 なんでもタイでは家の値段にキッチンやバスルームは含まれておらず、すべてオプションなのだという。 この奥さんの弟が板金屋でしばらく働いていたのだが、最近姿を見かけなくなったと思ったら、無断欠勤を繰り返したのでクビにしたらしい。 身内にも厳しい板金屋の社長は「タイ人てのは女はよく働くけど、男はからっきしだね。」としきりに嘆いていた。
 一方、産業機械の輸出業者の得意先は主にタイなのであった。 社長はバンコクにアパートを借りていて、2ヶ月に1度のわりでバンコクに出張しているのだという。 それだけ頻繁に行くので、航空券もバンコクでオープンチケットを買っておいて、次に行く時に使えるので安上がりだという。 なんでもアユタヤ郊外に日系企業がたくさん進出し、質の良い日本製の工作機械は引く手あまたなのだという。 世の中にはいろんな仕事があるものだ。
 ふたりとも普通のおじさんにしか見えないのだが、僕なんかよりもタイという国に深くコミットしている。 それはひとえに日本とタイの長い間の友好的な関係に拠るところが大きい。 ほとんどのタイ人は日本人の事を好意的に見ているし、日本人もまたそうである。 二国間関係というのは突き詰めればこうした人間対人間の関係に収斂していくもの。 超個人的な意見ではあるが、日本がもし東南アジアに位置し、アセアンの首長国だったらどんなにいいか。 位置的には現在のアンダマン諸島あたりなんてどうだろう。 タイやマレー半島と物理的に近くなるのは今の自分のビジネスにとっても好都合である。
 日本の地政学的な不幸は、ひとえに「特定アジア」の国々が隣にあるということだ。
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by theshophouse | 2006-05-20 01:12 | Critique
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