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トリノ・オリンピックのA級戦犯
 トリノ・オリンピックが終わった。 今回日本は荒川選手の金メダルひとつだけという結果に終わったが、前回のソルトレークでは金メダルがひとつもなかったので、まあこれはこれで良かったと思う。 しかし、荒川選手が金メダルを取ってもマスコミの論調は「日本惨敗」一色である。 僕はこのムードには同意しかねる。
 そもそもメダルの皮算用が甘過ぎたのである。 日頃ワールドカップには参戦せず、Xゲームに出て賞金を稼ぎまくっている、アメリカのいかにも知能指数の低そうな選手たちがオリンピックという格下の大会に出ると決まった瞬間、ハーフパイプの日本のメダルの可能性は事実上なくなったし、世界記録保持者の加藤条治のメンタルがあれほど脆弱なものだとわかってさえいたら誰も彼に金メダルはおろかポディウムすら期待しなかったろうし、いまだ寺尾や西谷、神野らベテラン勢に頼らざるをえないショートトラックでメダルというのも無理があるし、リレハンメルの頃からメンバーが変わっていないスキージャンプに復活を期待するのも虫が良すぎる。
 こうしたネガティヴな要素を事前に客観的に検証できていれば、日本選手団が当初掲げたメダル5個という目標がいかに無謀なものだったかが良くわかる。 にも関わらず、日本の選手たちはけっこう頑張ったと僕は思う。 その証拠が4位の多さである。 スピードスケートの及川選手と岡崎選手、パシュートの3人、フィギュアの村主選手、アルペンスキー回転の皆川選手。 いずれもあと一歩でポディウムに手が届くところだった。 そしてこれらの選手たちは当初JOCがメダル候補に挙げた選手とは必ずしも一致しなかった。 今回日本チームには運がなかったという意見もあるが、僕が見る限り運と不運は等しく日本の選手たちに作用した。 つまり、ツキがなく4位に終わった選手もいれば、ツイてて4位になった選手もいるということ。 総論すると、今回のオリンピックにおいていろんな意味で、日本は「4位な国」だったということだろう。

 最近よく選手たちから聞く「オリンピックを楽しみたい」という言葉。 そのこと自体に何ら異論を差し挟むつもりはない。 オリンピックに出るような選手は一般人の僕からみれば怪物みたいなアスリートがほとんど。 これまで一意専心その種目に懸けてきて、日本代表に選ばれた選手たちに「オリンピックを楽しむ」権利がない筈はない。 ただ、オリンピックを楽しむことがいかに大変か、今回それを口にした選手たち自身が一番よく身に沁みたことだろう。
 今回僕が観たなかで、それを楽しんでる日本の選手はそう多くなかった。 この場合の楽しむには二種類あって、ひとつは初出場の選手などがオリンピックのプレッシャーなど感じないうちに、いつも通りの実力を存分に発揮してしまい、あっけらかんとしている「ビギナーズ・ラック的快楽」。 もうひとつはオリンピックのプレッシャーを知り尽くし、かつそれを乗り越えて自分の最高のものを出し、脳内にドーパミンやらエンドルフィンやらが分泌するほどの状態を経験し、そのことによって楽しいと感じられた「至高の快楽」。 僕が見たなかでは、前者に及川選手やアルペンスキー回転の湯浅選手、スノーボードクロスの藤森選手、カーリング・チームら。 後者には荒川選手や岡崎選手、皆川選手やスキージャンプの岡部選手らがそれぞれ挙げられる。 
 裏を返せば、このいずれかの快楽に辿り着かない限り、オリンピックを楽しむことはできない。 自分の競技以外で、世界的イベントとしてのオリンピックを楽しんだに過ぎない安藤美姫らが「楽しめました~」と言うに至っては、完全に観客的な視点からのものであり、選手としてのコメントではない。 インドのアルペン選手のように、ただ参加するだけでも意義を見い出すことができる選手なら、たとえ自らが惨憺たる成績に終わっても、イベントとしてのオリンピックを満喫することができるだろう。 メダルを狙いにいって、国民の誰しもがその結末を予想していたように無謀な4回転で自爆した時点で、彼女にとってのトリノ・オリンピックは今井メロのそれと同様楽しめるような性格のものではなくなったはずだ。

 僕自身は寝不足になりながらも十二分にオリンピックを堪能させていただいた。 確かにメダルにあと一歩という展開の連続にイライラしなかったといったら嘘になる。 しかし、所詮勝負は時の運。 今大会はただの旗持ちでしかなかった加藤条治をはじめメダル候補は次々玉砕したものの、あまり注目されていなかった選手が予想外の頑張りをみせ、むしろ日本の選手は当初の予想以上に健闘したのではないかと思うぐらいだ。
 それでもこの結果を惨敗という一言で片付けようというのなら、僕のなかでA級戦犯はもう決まっている。 それはこの男である。



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 今回のトリノも、いつものように現地のスタジオから呼びかける修造の姿を目にすることができたが、各試合会場ではどうだっただろう。 トレードマークである必勝ハチマキに日の丸マントのいでたちで、世界中のメディアに逆取材されるほど大騒ぎしながらの応援スタイルはつとに有名だが、どうやら2004年のアテネ五輪でこの修造の応援が一部にひんしゅくを買ったらしく、今回は本人も相当押さえ気味に応援していたようなのだ。
 だが、これでは当然選手たちに修造の応援は届かない。 いつもならスタンドを縦横無尽に走り回っての応援も、今回は定位置にとどまっての応援。 いつもならテレビ中継でカメラが選手を追っている時、その背後のスタンドに自然にフェードインしてくる修造の暴れっぷりだが、今回はまったくお目にかかることができなかった。 もっとも本人にしてみればやはり血が騒ぐのか、要所要所で節度を守りつつもそれなりに頑張って応援してはいたようなのだが、あれは現地で実際に戦っている選手たちへの応援はもちろん、それをテレビで観ている日本のお茶の間も「おっ、修造がまたバカやってんな。 頼むぞ日本の応援団長!」といった感じで盛り上がったりもするわけである。 つまり修造の応援によって初めて現地と日本の温度差は解消し、そこに一体感が醸成されるのである。 これがあるのとないのとでは大違い。 選手たちの成績にも直結するのは言うまでもないのだ。
 結論として、今回のトリノ・オリンピックにおける日本の選手たちの成績がイマイチであるとするなら、それは全部松岡修造一人のせいである。 修造は「日本応援団長」としての自らの立場を再認識してもらい、以降の国際的なスポーツイベントにおいてはきっちりとその役目を果たしてもらいたい。 幸いWBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)やドイツW杯とイベントが目白押し、日本はまだまだ修造の暑苦しさを必要としているのだ。

 修造よ、テニス教室なんかやってる場合じゃないよ!


荒川静香選手のウイニングスケートを放送しなかったNHKまとめ
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by theshophouse | 2006-03-04 01:58 | Critique | Comments(4)
Commented by nasikanasika at 2006-03-04 21:56
私も何か物足りないと思ってたのですがようやく謎が解けました。
A級戦犯はどう見ても修造ですねw
Commented by theshophouse at 2006-03-05 01:03
>nasikanasikaさん B級戦犯は原田雅彦、今井メロス、成田童夢といった面々でしょうか。
Commented by あら at 2006-03-05 12:54 x
A級・B級ってのは犯罪の重さのランクを示しているんじゃないんだけどね・・・。個人的に松岡さんは本当に勘弁願いたい。誰か適当な事後法作って松岡さんを檻に入れておくこと考えてくれませんかね。夏まで。
Commented by theshophouse at 2006-03-05 23:58
>あらさん はじめまして。 A級とB級戦犯の違いについてのご指南ですが、当然そうしたことは承知してます。 檻に入れろと言われますが、修造は動物でも犯罪者でもありません。
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