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長谷部の効能
 アメリカ戦。 日本2対3の敗戦。 試合内容からすればよく1点差までもってきたなという感じだった。 アメリカという国はいつだって飛び抜けた選手はいないものの、個々の選手のアスリートとしての資質が高く、チーム全体のパッケージはハイレベルだ。
 日本は1月末に合宿を始めてから最初の試合。 対するアメリカは非公開の韓国との練習試合を含めると既に4試合を消化しており、試合勘やコンディションの面で優位にあったと言っていいだろう。 加えて野球場にシート状の天然芝を敷き詰めたグラウンドは滑りやすく、日本選手はやたらと足を取られていた。 アメリカの選手も滑ってはいたが、日本の選手ほどではなかった。
 それにしても前半10分あたりからのアメリカの攻勢はなかなかだった。 僕がもし敵将で、日本と対戦するとしたら今日のアメリカのような戦い方をするだろう。 すなわち前線と最終ラインとの距離をコンパクトに保つことで中盤に数的優位を保ち、かつ前線と中盤が一体になって日本の後方でのボール回しに常にプレッシャーをかけ続けること。 日本は相手の前線から追い回されるとパス回しにミスが生じやすく、中盤でやすやすとボールをカットすることができるし、苦し紛れのクリアボールを拾うことも容易い。 日本の最終ラインでのボール回しはけっこう稚拙だ。
 アメリカは立ち上がりからかなり入れ込んでいたので後半のどこかでバテることは十分予想できたが、だからといって前半のほとんどの時間帯、日本がサンドバッグ状態になってしまったのは不甲斐ない。 今日の日本は久保のワントップの3-6-1からスタートしたが、久保も周囲のプレッシャーに孤立無援でボールをキープできず、相手の高い最終ラインを崩すのに有効な2列目以降の飛び出しもほとんどなかった。 もっとも中盤を完全にアメリカの支配下に置かれたため、前線にボールが行くことすら少なかった。 本来こういう「厳しい時間帯」が続く時こそサイドに起点をつくってカウンターを狙いたいところだが、加地も三都主もするずる下がって5バック状態になってしまい、中盤はますますアメリカのやりたい放題、せっかく加地や三都主にボールが渡ってもハーフラインを超えない位置ではたちまち相手に数的優位をつくられバックパスするのがやっと。 パスが通らないならドリブルを選択してもいい場面もけっこうあったと思うのだが、そういうときでも日本の選手はパスに固執する。 なかば強引にでもドリブルを仕掛けた時はけっこうファウルを貰ったりできるものだが、日本の選手は時々ドリブルという選択肢を忘れる癖がある。 中田英寿が時折見せるなかば強引なドリブルはアクセントになるし、相手のリズムを狂わせるという意味で、それをやること自体に意味があるのだ。

 後半、ジーコは最初から巻と佐藤を入れて3-5-2にした。 2列目やサイドが飛び出す気がないならハナからこうするしかない。 ところがセットプレイから失点し0-3。 試合のリズムは変わらない。 後半10分、ジーコは長谷部と阿部を投入して4-4-2に変更。 僕が知るなかで、ジーコが試合中に2度システムを変えたのは初めて見た。 おそらくジーコも半分はパニック状態で、あとの半分は神頼みか妙な確信があったのか。 ところが結果的にはこの4バックへの変更が試合の流れを変えた。 前半さっぱりだった加地と三都主が生き生きしだしたのは、2人が4バックになって低い位置にポジショニングしてからだった。 そのことで2人がオーバーラップしてきた時にまわりにサポートができ、パス交換によってライン際を抜いていくことができるようになった。 前半2人が単独で持ち上がって潰されていた状況から考えるとこの違いは大きい。
 そして後半15分、加地からのクロスが上がる。 相手を完全に抜けずともボールひとつ通る隙間だけは作り、予備動作をできるだけ小さくした速い振り足の素晴らしいクロスだった。 ああいうクロスだと応対した相手DFはタイミングが計れず、コースに足を出すことすらできないものだ。 間違いなく加地が上げた生涯最高のクロス。 いつもの牧歌的なクロスではなく、明確な殺意が込められたクロス。 ワールドクラスだった。 そして巻。 彼らしい体を張ったゴールだった。 この時の2人のプレイには殺意があった。 僕はこういうプレイが好きだ!
 しかしこの負け試合で日本のマン・オブ・ザ・マッチを選ぶとすればそれは間違いなく長谷部だろう。 代表デビュー戦ながら落ち着いてボールを散らし、時にはドリブルで突っかけ中盤に活力を与えた。 2点目のコーナーキックを得るきっかけとなった巻へのスルーパスは見事だった。 長谷部と阿部が加わって中盤にタメができ、両サイドも生きた。 長谷部のいいところは常にゴールを意識して動き、パスを出せるところだろう。 松井に続いて中盤に頼もしいオプションが加わったことは喜ばしい。 この試合、遠藤や福西はほとんど印象に残らなかったが、長谷部のそれは鮮烈だった。
 中盤には続々と新しいタレントが生まれる日本代表だが、前の方の人材不足は相変わらず。 病み上がりの久保もまだまだトップフォームにはほど遠い。 ジーコは平山や大久保を招集する気はないのだろうか。 これはオランダ・エール・ディビジの得点ランキングだが、今季1部に昇格したばかりの弱小チームで平山はけっこう頑張っていると思う。 ロクに試合にすら出れないへナギや寿司禿をまるで常連のように代表に召集するよりも、今日点を取った巻や平山、ダメもとで大久保をガンガン使ってみるのもまた一考と思うのである。 もう決定力不足を解消する時間はないのだ。
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by theshophouse | 2006-02-12 00:04 | 蹴球狂の詩 | Comments(4)
Commented by FeelGroove at 2006-02-12 15:22
こんにちは。
長谷部、素晴らしかったですね。
攻撃でも守備でも視野が広さを感じさせますね。
そしてあの高い技術で状況を打開させていくプレイは、
前半のいらいらを払拭させてくれるものでした。
期待が大きい選手がまた出てきましたね。
Commented by theshophouse at 2006-02-13 01:19
>FeelGrooveさん お久しぶりです。 長谷部は何か持ってますね。 でなきゃ初代表デビュー戦、しかもアウェイであれだけのものは出せないと思います。 ドイツに行って欲しいですね。
Commented by osakana306 at 2006-02-13 12:39
負けましたね、けど
又、苦しい時に中沢が入れました。DFなのでゴール前に居る時間と決定率を考えるとFWにもがんばってもらわないとね。

(僕がジーコ&サッカー協会と犬猿の仲でなければ..)
Commented by theshophouse at 2006-02-13 23:28
>osakana306さん 中澤は守備でやられっ放しだったのでプラマイゼロですね。 次の試合はいっそのこと中澤の1トップで。
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