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テレバイダーよ永遠に!
 寒風吹きすさぶ2002年の大晦日午後9時30分、我々が、付近にはまったく人の気配すらない東京・お台場のテレコムセンタービルの前に突如として現れた大行列の最後尾に並んだのにはもちろん理由があった。 それは、ここ半年の間毎週楽しみに観ていた東京MXテレビの「テレバイダー」という番組(土曜ワイド劇場のタイトルの無意味性と金剛地武志を参照されたし)が、年越しスペシャル番組を視聴者参加の公開生放送で行うことになり、観覧希望のメールを送ったところ見事に当選(ほぼ希望者全員が当選したものと思われる)し、妻と弟を連れだって観に行くことにしたからであった。
 僕とテレバイダーの付き合いは約半年間であった。 ワールドカップを迎えた6月、僕の住むアパートが突如外壁の塗り替え工事を開始し、それに伴って屋上に設置されていた老朽化が著しいTVアンテナを撤去して新しいものに交換したのである。 その際にアンテナにはこれまでなかったUHFアンテナも付き、衛星放送用の巨大なパラボラもついたのである。 こうして僕はそれまで受信することができなかった東京MXテレビを観ることができるようになり、テレバイダーの存在を知ったのであった。 以前にテレバイダーのホームページをひょんなことから見ていた僕は、さっそくテレバイダーのオンエアを観るようになった。
 はっきり言って、このテレバイダー以外の番組は恐ろしくつまらないものばかりで不人気の極致、もはや存続すら危ぶまれている?状況にある東京MXテレビのなかで、それは異色中の異色の番組であった。 まず、1時間の生放送という放送枠のなかで、アンカーの金剛地武志と2人の女性コメンテーターが番組中で喋るコメントは99%台本の「超」棒読みである。 この超棒読みは、予定調和の進行が場数を踏んだ出演者によって自然に行われる現代のテレビ番組の潮流のなかにあっては極めて異質であり、事前に放送作家によって「つくられた」はずの台本の行き先は逆に不透明、何が飛び出すかまったく読めない妙な緊張感に満ちていた。 なかでも番組中の金剛地と2人の女性コメンテーターの喜劇的なカラミは秀逸で、絵コンテそのまんまのコミック的カメラ割りともあいまって番組に独特の風味を与えることに成功していた。 また、番組ホームページのBBSやChatのページとリアルタイムにリンクして放送中のみ書き込みができるシステムは斬新で、生放送中に拾い上げられた視聴者の声はBBS/Chat担当の女の子によって金剛地に伝えられ、それに対する金剛地の生(台本なし)のコメントと通常の台本棒読みのコメントの落差は、この番組の隠れた大きな見どころのひとつであった。
b0045944_1434318.jpgテレバイダーのスタジオ風景(最終回オンエアより)
左から津島亜由子、金剛地武志、寺田椿のレギュラー陣 手前はBBS/Chat担当の3人の女性タレントのうちのひとり、肘井美佳(以上敬称略)
b0045944_145484.jpg金剛地渾身の演技(最終回オンエアより)
本職がミュージシャンとは思えない金剛地武志 どこかのアングラ劇団出身の役者くずれといったほうがピッタリきます
b0045944_1455942.jpg津島さんのブリブリにあきれる金剛地(最終回オンエアより)
番組中で毎週繰り広げられる小ネタのひとつ この漫画的なカメラ割り、このうえなく好きでした
 しかしながら、このように個人的に大好評を博していたテレバイダーではあったが、この年越しスペシャルを最後に放送打ち切りになってしまうという。 放送が打ち切られる理由は定かではないが、お気に入りの番組が終わってしまうというのはつらいものである。 かくなるうえは東京MXテレビがあるお台場のテレコムセンターに勇躍馳せ参じ、この番組の最後に立ち会うことのみがテレバイダー・ファンの僕に与えられた最後の御奉公であるとの認識から、大晦日の一大決心に及んだのである。
 一大決心とは大袈裟なとお思いの方もおられるであろうが、僕は年越しの瞬間を家以外の場所で過ごしたのは過去にたった一度しかないのである。 出不精なのである。 年越しの瞬間は「ゆく年くる年」を観ながら迎えるのが通例なのである。 今年にしても中島みゆきが厳寒の黒部ダムから生中継で歌う「地上の星」かイノキ・ボンバイエの藤田・ミルコ戦でも観ながらぬくぬくと過ごす予定であった。 しかし結果から見れば、今年も視聴率が低調に終わった紅白も、茶番でしかなかった吉田・佐竹戦や対戦相手の実力差があり過ぎたサップ・高山戦、期待していたのにミルコの膝蹴りがよっぽど気持ち良かったのか、単調な下半身へのタックルに終始し、自らの脳天を敵に差し出した藤田のふがいなさ、去年やりきってしまったために今年は明らかにネタ切れで本当にただの猪木祭でしかなかった猪木の登場シーンなど無惨な結果に終わったイノキ・ボンバイエを見る限り僕の選択は正しかったといえる。 僕の知り合いのなかには誰かの家に友達同士集まってみんなで猪木祭を観ながら年を越した人もいたのだが、猪木祭が結果としてそれほど感情移入するソフトとなりえたかどうかははなはだ疑問である。 TBSという、元来格闘技を含めたスポーツイベント全般の伝え方が異常にヘタな局が扱っただけになおさらだ。 もうTBSは世界陸上以外はやらないでいいと個人的には思う。 結局イノキ・ボンバイエにおける実際の試合時間は2時間半の放送枠のうちのわずか20%にも満たず、後に残された多くの時間は、つまらない対戦を無理やり盛り上げるエピソードに終始しただけである。 後で録画を観る限り、個人的にはこの日の裏の裏という位置付けであったはずのテレビ朝日系「ビートたけしの世界はこうしてダマされた?超常現象・解禁ファイル衝撃の第3弾オカルトの逆襲!」のほうがよっぽどイケてた。
 テレバイダーの公開生放送は面白かった。 オンエアされることはなかったが、会場となったアトリウムでは年越しそばや焼そばの出店も登場し、餅つきも行われて正月気分を盛り上げていた。 なかでも放送中ずっと副音声でやっていた「裏番組情報108連発」はテレバイダーの真髄とも言えるものであった。 テレコムセンター1階のアトリウムに集まった延べ842人のコアな参加者の前で坂本アナが一心不乱に読み上げた裏番組情報であったが、その場にいた参加者はリアルタイムで聞くことができなかったのは残念至極。 僕は家に帰って録画したビデオを再生し、裏番組情報108連発をチェックした。 公開生放送のフィナーレを飾ったのは、3人の出演者が参加者の熱気でむせかえるアトリウムに登場しての生ショートコント?だったが、いつもスタジオで繰り広げられる3人の台本通りの痛快な台詞まわしを生で見れたのは感動ものであった。 オンエアが終わった後、出演者がアトリウムに勢揃いし一人一人挨拶をしたのだが、金剛地は「台本ないので」と、喋りにくそうにしていた。 その印象は良くも悪くもテレビで観た金剛地武志そのまんまであった。 彼にはオーラやカリスマ性といったものはない。 しかしながらその不思議な存在感は他に類を見ないものがある。 今彼のことを知る人はそれほど多くはないであろう。 しかし彼はいずれ出るところに出る人材であると僕は強く思うのである。 それにしても金剛地武志36歳、僕と同じ歳とは知らなかった。

b0045944_1473795.jpg生放送終了後、金剛地挨拶(アトリウムにて・著者撮影)
左はBBS/Chat担当の3人の女性タレント 金剛地の後方でカメラを構えるのは、この日アトリウムで「裏番組情報108連発」を見事読み切った坂本知子アナ 裏声のナレーション、好きでした
b0045944_1481735.jpg出演者一同、最後の挨拶(アトリウムにて・著者撮影)
テレバイダーの出演者たちのカーテンコール うううっ、なんで終わっちゃうんだよぉー(T_T)
 こうして、わずか半年間ではあったが僕が愛した番組「テレバイダー」は幕を閉じた。 2003年の正月、どのチャンネルを眺めてみても、安易な企画、質より量で勝負の出演者で構成された見かけ倒しで騒々しい番組の横溢には辟易させられる。 NHK、民放各局が莫大な製作費と豪華な出演者を使ってもろくな番組が作れない昨今、テレバイダーが残した手作り感、台本や裏番組へのアイロニー、メディアミックスという手法、その足跡は決して小さくはない。(2003/1/3出稿を再録)

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by theshophouse | 2004-11-30 14:10 | Critique
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