Top
追悼 レビィ=ストロースさん
b0045944_1294392.jpg
 クロード・レビィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss)氏が亡くなられた。 101歳の誕生日を3週間後に控えた10月30日のことだった。
 僕は学生時代に卒論で建築デザインにおける記号論・言語学、さらにはポストモダニズムといったようなことをテーマに研究していたので、関連書籍としてレビィ=ストロースやロラン・バルト、ジャン・ボードリヤールやジャン・フランソワ・リオタールらの本をいくつか読んだ。
 いわゆるフランス構造主義はかじった程度だが、レビィ=ストロースの「悲しき熱帯」と「野生の思考」、ロラン・バルトの「明るい部屋」など一連の著作、ジャン・ボードリヤールの「消費社会の神話と構造」は今でも大切にしている蔵書である。
 なかでも「悲しき熱帯」と「明るい部屋」は以前からこのブログの右下のライフログにも載せているようにおすすめの作品。 バルトの「明るい部屋」は写真が好きな人には是非読んでみて欲しいと思う。
 「悲しき熱帯」はレビィ=ストロースがブラジルで大学教授をしていた頃のブラジル奥地の未開社会でのフィールドワークを中心に書かれている。 それ自体は民俗学や文化人類学のカテゴリーに入るものだが、言語学や社会学についての書物でもあり、そして何より優れた紀行文学である。
 以下、同書から印象的な一節を引用する。

 最後に、これほど多くの都市で、街を西に向かって駆り立て、東の地区に貧困と退廃を強いている作用の不思議な因子についても触れなければならない。恐らくこれは。太陽の動く方向は正であり、その逆の方向は負であるという、そして一方は秩序を。他方には無秩序を意味するという無意識の信仰を人類に原初から染み込ませた、あの宇宙のリズムの単なる表現なのであろう。

 確かに都市は西に発展する。 三蔵法師も西に向かった。 ヴィレッジ・ピープルもペット・ショップ・ボーイズも「西へ行け」と歌った。 それは都市というものが本能的に闇を恐れる人間の所産だからなのであろうか。
 次はインド、カルカッタ(コルカタ)での記述。

 旧世界のミイラになった町であれ、新世界の胎児のような都市であれ、われわれはとかく、物質上精神上の最も高い価値を都市生活に結び合わせ勝ちである。インドの大都会は一地帯を成している。しかし、われわれが欠陥として恥じるようなもの、癩病のように看做しているものは、この地帯では、ぎりぎりの表現にまで還元された都市生活の事象を形作っているのである。個人の群れ集り----それは現実の条件がどんなものであろうと、とにかく何百万という人が群れ集ることが存在理由であるような群集なのである。芥、無秩序、乱脈、雑沓。廃墟、荒屋、泥、汚物。体液、糞、小便、分泌物、漏出物。都市生活がそれに対する組織的な防禦であるようにわれわれが思っている一切のもの、われわれが嫌っているすべてのもの、われわれがあれほど高い代価を払ってそれから逃れようとしているすべてのもの、人間が集って暮らしているために生ずるあらゆる副産物、そうしたものがここでは限度に達するということがないのだ。それらはむしろ、町が繁栄するために必要な自然環境を形作っている。各々の人間にとって街路は、小路であれ路地であれ自分の「うち」なのであり、そこで彼は坐り、眠り、ねばねばする塵芥からさえ食物を摑みあげるのだ。街路は、人間に嫌悪を起させるどころか、これほど多くの人に分泌物や汚物で穢され、踏みつけられ、捏ね回されたというただその事実によって、一種の「馴化された」状態を獲得するのである。

 もちろんレビィ=ストロースがアジアに向ける視線は西洋人のそれだが、同氏が人類学者、思想家である以前に、類い稀な観察者であることがわかる。
 犬HKの「爆問学問」で、太田がこの「悲しき熱帯」の訳者でありレビィ=ストロースの弟子でもある川田順造氏を訪ねたことがあった。 レビィ=ストロースのファンなら垂涎ものの機会だったが、例のタメ口、相変わらず「俺」が主語の言葉遣いには辟易させられた。 まあ面白かったけど。 見逃した方はこちらを。

http://www.veoh.com/browse/videos/category/educational_and_howto/watch/v18551512MhN4WSpf

 ちなみにこのレビィ=ストロース氏、名前がリーヴァイ・ストラウス(Levi-Strauss)と紛らわしいため、時にジーンズ屋(リーバイス)と間違えられたという逸話があるが、実際にリーバイスの創業者とは遠縁に当たる(Wikipediaより)。

 レビィ=ストロース氏のご冥福をお祈りいたします。
[PR]
by theshophouse | 2009-11-05 01:00 | 号外
<< ベルリンの壁崩壊から20年に思う 仕事場移転 >>



思うところを書く。
by theshophouse
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
Critique
Asian Affair
蹴球狂の詩
Odyssey
Photographs
Iiko et Tama
Non Category
Food
Mystery
Design
アジア人物伝
Alternative
Books
Movie
Sounds Good
昭和
モブログ日報
F1
号外
Profile
以前の記事
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2004年 11月
2004年 10月
2001年 10月
フォロー中のブログ
国境の南
osakanaさんのうだ...
青いセキセイインコ推定4...
THE SELECTIO...
V o i c e  o...
わしらのなんや日記
90歳、まだまだこれから...
午前4時から正午まで
藪の中のつむじ曲がり
PISERO しゅうまい...
最新のトラックバック
エス東京オフィス
from はるの日常
才色兼備な「タイのセレブ..
from Boochanの宝探し
チベットでのジェノサイド
from わしらのなんや日記
経済別に選びたい放題!チ..
from Boochanの宝探し
IKEA for ママゴト
from わしらのなんや日記
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧