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奪還
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 お預け食わされて12日後、長い雌伏の時が過ぎ、ようやく取得時講習のその日がやってきた。 午前9時、自宅から自転車でコヤマドライビングスクール二子玉川校に向かう。 今日は終日ここで講習を受けるのだ。
 このコヤマドライビングスクール二子玉川校は曽我ひとみさんの夫、チャールズ・ジェンキンス氏が佐渡に帰る前に通って自動車免許を取得したことでも知られる。 近代的な設備に英語教習可。 僕がむかし通った田舎の教習所とは対極にあるようなスクールである。
 フロントで受付を済ませ、所定の教室に行くと、そこはせいぜい20人ぐらいが入れば満席になるような小さなスペース。 中に入ると窓際の席に加瀬亮みたいな感じの男性が一人座って物思いに耽っている。 大部屋に受講者が溢れんばかりの図を思い描いていた僕はその落差に呆然としつつも、とにかく適当な席を見つけて座った。 やがて教官とほぼ同時に藤田和之に似たちょっと強面の男性が教室入り。 何と受講者はたった3名である。
 ここにきてようやく判明したのだが、取得時講習はレクチャーだけではなく高速実習も含まれるため、その性格上少人数のグループで行われるのである。 午前9時半から午後5時半(休憩1時間含む)までの濃密なプログラムのうち普通車講習が4時間、応急救護処置講習が3時間という内容である。
 最初に高速実習のためのレクチャーが1時間ほどあり、次に教習車に教官と受講生3人の計4人が乗り、高速実習に向かう。 コヤマドライビングスクール二子玉川校の場合、高速実習は第三京浜で行う。 3人の受講生が交互に運転をしながら教習所→玉川インター→港北インター→都築PA→玉川インター→目黒通り→自由通り→世田谷通り→多摩堤通り→教習所と述べ3時間に及ぶドライブである。 教官からは進行方向についての指示はあるものの、運転内容についての指示はほとんどない。 やがて車内にも弛緩した空気が漂ってきた頃、教習車は学校に戻り、そこで昼食休憩となる。
 加瀬亮氏はうっかり失効で失効後1年以内だったこともあり、仮免許までは免除され本免からの再取得だったそうだが、もともとペーパードライバーに近かったそうで、本免実技は4回目でようやく受かったという。 一方の藤田和之氏は元々運送屋だったそうだが、駐車監視員制度導入後たちどころに駐禁違反が重なり、あっという間に免取りになったそうで、制度上その後1年間は免許の再取得すらできなかったという。 今回ようやくその期間が明け、すべて1回で合格して今日に至ったとのこと。 すでに運送業とは別の仕事に就いているという。
 それぞれまったく異なる理由で免許を失った3人の男たちが今日この場で一緒に講習を受け、クルマの中の狭い空間を共有する。 免許失効者の不思議な、そしてちょっと物悲しい一日限りのオフ会といった風情。
 午後の部は応急救護処置講習。 レクチャーを受けたのち、三角巾を使った応急処置の方法や負傷者の救護方法を実践訓練する。 次に人体模型をつかって気道確保や人工呼吸の訓練を行い、最後に自動体外式除細動器(AED)の操作方法を学ぶ。 AEDについては万一の時のために自分でも扱えるようになっておきたいと常々思っていたのでこの機会に習得できたことは良かった。
 この取得時講習だが、もちろん自分がむかし免許を取った時にはなかった。 もちろん教習所に通った人は学科講習のなかで行うので免除されるのだろうが、あらためて一発免許のハードルの多さを実感させられた。 とはいえようやく手にした修了証。 あとは明日府中試験場に出向き、念願の免許証を交付してもらうだけだ。

 9月某日。 非公認のドライビングスクールの教官とこの試験場内のコースで練習してからちょうど一か月。 二つ目のハードルである仮免の実技で一度落ちたとはいえその2日後には合格し、それ以外はすべて一度で合格したにも関わらずそのぐらいの日数を要してしまった。 実質的には仮免の路上練習5日間と取得時講習12日間のロスタイムはどうしようもなく、それを除けば2週間程度で取れたということになるのかも知れない。 夏休みで学生が多く実技試験の予約が取りにくかったことと、たとえ予約が入れられそうでもその日に自分の仕事の都合で試験場に来られないこともあったので2週間という結果はまずまず。 夏休みでなければ実質1週間でクリアすることも可能だろう。
 窓口で所定の用紙に印紙を貼り写真撮影へ。 終わるとその場で交付まで2時間半かかることを伝えられる。 この殺風景な試験場での待ち時間もこれが最後である。 移動中や試験場での暇つぶし対策として持ち込んで読破した文庫本もこの一か月の間で5冊を数えた。
 指定された時刻になるのを待って4階にある「免許作成室」に行く。 この一か月のあいだ通った試験場だが4階に上がるのはこれが初めて。 3階までと違い人の気配がしない。 窓口で順番に名前を呼ばれて次々に免許証を受け取るのかと思っていたが、その名のとおりそこは実際に免許を作っている場所らしく、明らかに試験場の職員以外は入ることをためらうような扉の先に続く廊下に面した小部屋だった。
 どうやらその時刻に免許を受け取りに来たのは僕一人のようである。 ドアをノックして恐る恐る中に声をかけると女性職員が出てきて書類を受け取ると、すぐに免許の上に貼られたフィルムを剥がしながら小部屋から出てきた。 見せられた免許証の本籍の部分は空欄になっている。 偽造防止の為の処置だそうだ。 小部屋の前にある端末に免許証を入れ、事前に登録しておいた二つの暗証番号を機械に入力すると画面上に本籍地が表示された。 これで確認は終了。 免許証奪還である。 有効期限のところの初心運転者を表す緑のラインは40を過ぎたジジイには少々気恥しくもあった。

 この物語を最後まで忍耐強くお読みいただいた方に謹んで申し上げる。 もしあなたが免許をお持ちなら今すぐその有効期限を確認していただきたい。 うっかり免許を失効したことに気づいた時の何とも言いようのない気分は、できることなら誰にも味わって欲しくない類いのものである。 そして、万が一あなたが既に地獄の底に突き落とされた末に辿り着いたのであれば、捲土重来の日を少しでも早く迎えるためにこのページがその一助となればこれにまさる喜びはない。(了)
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by theshophouse | 2009-09-24 01:29 | Non Category
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