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政治家とウィット
 つくづく日本の政治家にはウィットというものがないと思ったのは、例の田中真紀子と鈴木宗男の国会での参考人招致でのやりとりを見てのことである。 僕はこの敵対している二人の政治家、基本的には似たもの同士であると思っている。 それぞれ寒く経済的にさほど恵まれていない地方に地盤を置き、かたや叩き上げの政治家の父の血が脈々と流れ、かたや自分が叩き上げの政治家そのものである。 田中真紀子を父親とセットで考えた場合、地元への利益誘導という点において宗男はまったくその足元にも及ばない。 上越新幹線しかり、北陸自動車道しかりである。 目白の田中邸の前の一方通行の道が、田中家にとって不便極まりないがために一方通行でなくなった、なんて話もある。 要するに両名とも「地方の土建屋の番頭タイプ」という旧態然とした政治家である。 好き嫌いで人の事を言うのはどうかとも思うが、僕は両方とも嫌いである。
 田中真紀子が繰り広げた外務省批判や小泉批判は、彼女の心情を察すれば理解できないことはなかった。 しかし、僕ががっかりしたのはその表現方法においてである。 ほとんど大部分の国民はこれまでの経緯から外務省がどういう組織なのかということをいみじくも理解しているはずである。 それをこの後に及んでまたあのように事実を「赤裸々に」述べるという手法、特に当時のメモなるものを取り出して時系列の事実の列挙に終止する姿、さらにはやや暴力的に過ぎる批判には、毎度のことながら見ているものに疲労感を与えるものであった。 それはあたかも、組織に裏切られた人間が対立する組織に寝返って、そこでかつて自分が在籍した組織の恥部を洗いざらい暴露しているかのような印象を受けた。 一方でこうした物言いが主婦層の支持を得ていることも否定しないが、田嶋センセイ化するのだけは避けて欲しいものである。 人間誰しもストレートな表現ばかり続けられると聞いていて疲れるものだ。 彼女が怒っていたのは誰の目にも明らかだったが、もう少しウィットというオブラートに包んで表現できなかったか、と思う。 田中真紀子は本来的にはウィットのある人物であると思う。 ただ永田町というところはウィットが通用するような世界ではないのだろう。 この点で彼女に同情の余地はある。
b0045944_120122.jpg 宗男については論外である。 彼は自分の言葉というものを持っていない。 政治家としての言葉以前に、人間としての言葉を持っていない。 だから彼が喋っているのを聞いていても何も感じることができない。 このような人物が政治家として成り上がってしまう日本の社会自体がとても歪曲したものであるとしか言いようがない。 宗男はオウムの麻原同様現代の日本人が生み出したある種の意識が実体化したものであると思えてならない。 ある年代以上の日本人は誰もが宗男的なるものを意識下に抱えながら生きている。 宗男への嫌悪感はそんな自らへの嫌悪感に等しい。 そんな気がしてしまう。
 僕ははなから期待していなかったが、小泉純一郎にもウィットというものがなかった。 この男にあるとすれば、それはダジャレの多用癖だけである。 小泉内閣メールマガジンなどよりアントニオ猪木メールマガジンの方がよっぽど面白い。 そこには男が本音で語る世界がある。 最近猪木の詩集を読んだ。 そして思ったのは、ウィットというものは己が世界で一流になることによってのみ与えられる言わば天賦の才のようなものであるということである。 猪木にはそれが与えられ、小泉には与えられなかったということである。
 作家の長島有も書いていたが、昨年引退した敷島が栃東との初顔対決で敗れた時のコメント「俺みたいな雑草がどこまでやれるかと思ったけど、相手は雑草を食べて成長するサラブレッドだった」にみるウィットは、「無骨で無口な相撲取り」という僕の色眼鏡をその新鮮さで破壊してしまった。 英国議会のテレビ中継はウィットに溢れる議員同士のやりとりが見ていて本当に飽きない。 さすがウィットの先進国である。 結局のところウィットにしろ何にしろ、事物はそれが本当に必要とされる場所においてのみ生まれ、そして成熟するものである。 敷島関のコメントのようにウィットに富んだ表現というものは、時に発言や事物の真髄を端的に表現する力を持っている。 原稿棒読みの政治家諸君、これをうまく使わぬ手はないではないか、生きた言葉を使わぬ手はないではないか、と思うのである。(2002/2/22出稿を再録)

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by theshophouse | 2004-11-26 01:20 | Critique | Comments(0)
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