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マスの在りか
 最近の2つのニュースを見ていてかみさんが言った。 「この国のマスの人たちって何なんだろう?」 2つのニュースのうちのひとつはここ連日テレビや新聞を賑わせている「小泉内閣の支持率82%を維持」というものと、もうひとつはエルメスのフラッグシップストアのオープニングに湧く早朝の銀座に1,000人が列をなしたというものであった。
 かみさんが言った「マス」という言葉は「塊(かたまり)」と訳す。 それは「マジョリティー」という言葉に言い換えることができるかも知れない。 つまり多数の人々ということである。 僕は誰かを支持する率が80%を超えるような社会は健全ではないと思う。 むしろ危険ですらあると思う。 どんなに人気者が出てきて圧倒的な支持を得たとしても、それに対する反作用が起こり、支持と不支持が拮抗するというのが健全な状態であると思う。 じっさい総理になる以前は郵政三事業の民営化を声高に叫ぶ変人政治家に過ぎなかった小泉氏が、総理になった途端にこれだけ国民の熱狂をもって迎えられること自体が不可解である。
 いま小泉内閣を熱狂的に支持している人々はみな隠れ小泉シンパだったというわけか? 総理という肩書きはそれほど人々を狂わせるのか? 就任から一ヶ月余り、いまだ何らの実績もなく、市場の評価も得られず、失業率は回復せず、日本にとっていいことは何も起こっていない。 そこにあるのは漠然とした期待感だけだ。 先日の都議選でも街には小泉総理と握手した自民党候補者のポスターが街に溢れた。 案の定、小泉人気に乗っかった自民党は圧勝である。
 先の大東亜戦争が示すように、日本人は善くも悪くも一方向に流されやすい性質を持っている。 この国の人々には物事を少し冷めた目線で捉える能力が欠落している。 事の渦中に置かれてもその対象を俯瞰的に眺めることができるのが大人というものであろう。 そうした意味で日本人は子供である。
 エルメスに並んだ人たちのお目当てはオープン記念限定のバッグだそうで、これがとてもエルメスのものとは思えない貧相な代物であった。 サザビーあたりで3,000円ぐらいで売ってそうなトートバッグのようなものを5万で買って狂喜乱舞している。 愚の骨頂とはこれを指す。 ケリー・バッグやバーキンなど買うわけではないのである。 来店の記念にせいぜい安物でも買って溜飲を下げる程度のものである。 そうしてきらびやかな銀座の店を後にし、電車で片道2時間のド田舎の木造モルタル2階建てのアパートに帰って、畳の部屋にそれらを投げ出しては品定めするのが至福の時間なのである。
 もちろんこのような酔狂な人々がこの国のマスだとは思わないが、なんでもエルメスの世界中の売り上げの四分の一は日本だそうである。 グッチにおいても五分の一、ヴィトンに至っては三分の一だそうである。 「嗚呼我ら金満日本人」と嘆かずにはいられない。 それだけ日本人は高級ブランドを、エルメスを買っているのである。 銀座にフラッグシップストアができるのもうなずけるというものである。 自慢するわけではないがうちにはエルメスのものはひとつもない。 幸いにしてうちの妻は分相応な購買行動を実践しているようである。
 なぜこれほどまでに日本人はブランドに群がるのであろうか? 数十年前までその多くが農民であった日本人は、高度経済成長によって成金化し西欧化するなかで心の中には虚無感を抱えながらもそんなものには見向きもしないで突き進んできた。 そこに精神的な成熟はなく、あるのはただ物質的な豊かさに身を委ねることで自らの空虚な本質を豊かで充実したものであるかのように粉飾してきた姿であった。 そしてこうした愚は今日も飽くことなく続いている。

 最近のこうした現象を強引にひとまとめにすると、小泉総理を支持し、高級ブランドを買い漁り、飯島愛の告白本をわざわざ買ってまで読むというような分裂した人格が浮かび上がってくる。 これがマスメディアによって伝えられた現在の日本人のマスの正体であるというのは乱暴に過ぎるであろうか。 僕は決してそうは思わない。 ある人は極めて限定的な事物の一側面のみをコラージュしているだけだというかも知れない。 でもそれがマスコミのが伝えてきた日本人の姿であることに変わりはない。 マスコミはマスを伝えることでマスを見失っているのだ。 かみさんは続ける。 「私ってマスでいたことなんて一度もないし、マスと呼ばれる人たちが何処にいるのかもイメージできない。」 所詮それは幻想に過ぎないのだ。(2001/7/3出稿を再録)
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by theshophouse | 2004-11-21 02:45 | Critique
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